182 / 234

真夜中の相談室

「それで?ヒロちゃんはどうしたいの?」 『うっ………それは……………』 「ん?」 『…………もっとたくさん、シたいです…』 電話の向こう側 吃って歯切れの悪い声を出す従兄弟を急かすと、ぽろりと溢れたように口から本音を吐き出した 天から授かった美しいビジュアル 身長も高くて、大人びた雰囲気の持ち主 その上マッチョでスポーツ万能の、女に困ったことのないハイスペック男子 そんな男が今、身内相手に情けない声で己の欲望を打ち明けているのだ こんな面白いこと、なかなか無い 「シたいって、言えばいいじゃない」 『…それが言えたら苦労しねえんだって………』 「難しい子ねー…」 『なぁ、翔にもう1回したいって言ったら嫌がるかな?』 一度強気でそう提案してみるも、本人は唸り声を上げて否定する まだ試してもいないのに首を横に振るなんて意外と根性無しだと思ったが、それだけ相手を大切に思っていると思うと口には出せなかった だけど本当は、アタシには見えている 翔ちゃんは嫌がったりしないことを 元々流されやすそうでチョロそうな子だとは思った 気が強い割にはなかなか思ったことを言えない、恥ずかしがり屋なタイプ だけどヒロちゃんと2人でいる時の彼は、ふとした瞬間もの凄いスキスキオーラを醸し出していることがある きっと本人も気付かぬうちに 人間観察と心理分析が趣味のアタシからしたら、こんなに分かりやすい子はなかなかいない だからアタシには、直感として分かった 翔ちゃんはヒロちゃんを否定しないし、拒絶もしない 仮にヒロちゃんが“もう一度シたい”と言った場合も、恥ずかしがっているふりをしてきっと股を開く それにあの性格なら、“足りない”と言われると自分だけ満足しているのではないか、と勝手に思い込むはずだ ヒロちゃんが思っているより、きっと翔ちゃんはヒロちゃんのことが好き だから 「嫌われる心配なんて、いらないと思うけどなぁ」 『そ、そうかな……』 「試してみたら?」 『う………………』 今度は煽るような口調でそう言った 相変わらず不安げなヒロちゃんはまだ言葉を詰まらせて戸惑っている様子だ そんな彼に少し痺れを切らしながら壁にもたれ掛かると、あまり丈夫じゃなさそうな古い黒壁がギシッと音を立てて歪む 「ヒロちゃん」 『ん………』 「恋人なら、言いたいことは言わなくちゃ」 『……………』 そんな彼に、最後の助言 もうこれ以上うだうだ言うのであれば、これからもずっと同じ悩みを抱えていればいい じゃなきゃ言いたいことがあるのにずっと打ち明けて貰えない翔ちゃんが可哀想だもの 身内でよく知っている相手だからこそ、強く言える それにアタシは受身だ 味方をするなら、同じ立場の翔ちゃんの味方をする 「ね?恋人なんだから、ちゃんと伝えなきゃ」 『………そう、だよな…………』 「ん、言えそう?」 『オ、オレ、ちゃんと翔に言う……!』 最後に確かめるように尋ねると、電話の向こう側で萎れていた声が活気を取り戻す そんな従兄弟の声色を聞いて一度ため息を吐き、組んでいた腕を解く 動くたびにギシリと音を立てる古い壁の木屑がパラパラと落ちてきてアタシの黒い服を汚す あーあ、本当、経験豊富な癖して恋愛音痴なんだから 「翔ちゃん、今家にいるの?」 『ん、オレのベッドで寝てる』 「そう、早くベッドに戻ってあげなさい」 『ん…ありがとな、恭ちゃん』 電話中、ずっと声の大きさを気にしながら話していたヒロちゃん 案の定家には翔ちゃんが一緒にいるようで、寝ている恋人を気遣っていたようだ そんな出来過ぎた従兄弟を恋人の元へと返し、おやすみの挨拶をしようとしたその時だった 「恭亮、電話長いな」 「あっ……ちょっと……………」 『恭ちゃん?』 「あぁんっ……ちょ、待ってっ」 鍵を掛けていなかったおかげなのか、トイレの扉が突然開いてさっきの年上の男が入ってくる そして手際良く扉の鍵を閉めると、アルコールで火照ったアタシの体に腕を回し強引に便座へと座らせた 突然の出来事につい驚いてしまうが、こんなことで動揺などしない むしろ好みの男にガッつかれて、だんだんとテンションが上がってくる 「あぁっ、もうっ………♡」 『じ、じゃあオレ寝るな…!』 「んっ……おやすみ…………っ」 黒いワイシャツはいつの間にか着崩され、男はアタシの胸の突起を物凄いテクニックで弄び始める そんなアタシたちに気を使うようにヒロちゃんがそう切りだし、余裕のない中でおやすみの挨拶をして電話を切りスマホを床に落とす 「もうっ……強引なんだから………っ」 「好きだろ?強引にされるの」 「好き、だけど………っ」 「な、ここでシちまおうか」 太く逞しい腕には高級時計 そんな腕がアタシの体をぐっと持ち上げて器用に下着をずらしていく 今日は大学生の子とする予定だったんだけど…… でもこんな風にされて、アタシの緩い股が開かないわけがない 「1回だけよ……?トイレでシたのバレるとママに怒られるんだから」 「ああ、ほら、掴まって」 「んっ…………♡」 まぁ、大学生の彼は予定通り店を出てから相手をしてあげればいいか そう自己完結に至ったアタシは、目の前の男に向かって脚を開き腕をその体に回した 次の日、今度は翔ちゃんから同じような内容の相談を受けたことはアタシの胸の中だけに留めておくとしよう

ともだちにシェアしよう!