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はじめてのお泊まりその2
「わーい、お泊まりだ」
そう言ってアキが布団を抱え、おじゃましますと言って俺の部屋に入って来た
アキが布団を取りに行っている間に俺は部屋に散らかった物をクローゼットへ無理矢理押し込めるなどしていた
「翔の部屋に入れてもらうの、はじめてだな!」
「べ、別に何にもないよ……」
「んふ!翔の匂いがする!」
「やめろって……恥ずかしい……」
そしてベッドの隣にどさっと布団を置き、ベッドに腰掛ける俺の隣に座るアキ
その男前な恋人は大人っぽい見た目とは裏腹に、ハイテンションで部屋の空気をすうっと吸い込んではしゃいでいるようだ
お、俺の部屋にアキが…………
こんなことになるなら、普段からもっと部屋を綺麗に片付けておけばよかったかな
だってアキの家、いつも片付いてて綺麗だし
「あぁ、何かすっげえワクワクする」
「お泊まりなんていつもしてるだろ」
「そうだけどさ、翔の家でははじめてだろ?」
「まぁ、そうだけど…………」
なんてそう思っている俺を横目に、アキはそう言いながら面白みもないたった6畳の部屋を散策し始める
そして本棚に並ぶ漫画を指差して、これ知ってると無邪気に笑う
「そう言えばさ、翔のお母さんって芸能人だったりしないか?」
「え?」
「何かどっかで見たことある気がして」
「あー……多分CMじゃないかな、少し前だけど」
するとアキが思い出したようにそう尋ねてきた
そしてベッドから立ち上がると何か手掛かりになりそうなものはないか探し始める
俺はそんなアキの疑問に答えるべく立ち上がると、本棚の1番下の段から一冊の本を取り出し、それをアキに差し出す
俺の母さんは料理研究家
俺が中学の頃まではたまにテレビに出ていて、一時は調味料なんかのCMに出演していたこともあるが芸能人ではない
引退した現在は専業主婦として過ごし、パートをしながらたまにブログで料理のレシピを掲載している程度だ
俺がアキに手渡したのは、レシピ本
著者は俺の母、高村理央(たかむら りお)
「あ!やっぱり…!見たことあると思ったんだ」
「よく覚えてるな、結構前のことなのに…」
「美人だからかな、なんて」
「はいはい」
アキの冗談を軽く聞き流しながら先にベッドに腰掛けると、アキも俺に渡された料理本を持って再び俺の隣へ腰掛けた
そしてさっきよりも近い距離感で俺にくっ付き、本をぺらぺらとめくってご機嫌な様子で鼻歌を歌う
すると読み始めた本を早々に閉じたアキの顔が、不意に俺の方へとくるんと向きを変えた
「んッ」
気付くと目の前にはアキの整った顔面がこちらを向いており、高い鼻先はあと少しで触れてしまいそうなほどに近くにある
小さな瞬きすらも風を送ってくるような気がして俺は思わず目を瞑ると、その瞬間唇にちゅっと何かが触れた
もう慣れてしまったウブでない俺は、それがアキの唇でありアキが俺の隙を狙ってキスをかましたことを瞬時に理解した
「な、何だよ急に……」
「何かしたくなったの」
「うわっ」
「な、もっかい」
「んッ」
そう言ってアキは漫画を置き、その手を俺の体へと回しあっという間に俺を抱き上げた
そして俺を膝の上に乗っけると、再び山ほどのキスを食らわせていく
腰に触れるアキの温かい手
俺の部屋からはアキの匂いはしないが、その反面部屋が狭いおかげでアキとの距離も近く感じる
「ん、んっ……ぅ、ンんっ………」
「んっ………翔、かわい………」
「んンッ、ん……………っ、んっ」
次第に夢中になって溺れていく感覚
頭が正常に働けば、きっとこんな恥ずかしいことなどすぐに辞めてしまえるのに
それなのにアキとのキスを気持ちのいいことだと覚えてしまっている俺の頭はそれすらもできない
アキの手は徐々に俺のTシャツの隙間に入り込み、俺は自身の腕をアキの背中に回す
そして自らアキの分厚い舌に自身の舌を絡め唾液の取り替えっこに積極的に参加する
やば………………
キスすんの、気持ちイイ……………
そう思いながら腰をピクンと跳ねさせアキとのキスに没頭している時だった
「風呂沸い………って、あー……」
「んンっ!?」
「……………風呂沸いてるから、あんたら先入んなよ」
突然部屋の扉が開き、そう言いながら姉ちゃんが入って来た
その瞬間俺たちはピタリと動きを止めたが、この体勢じゃまるで言い訳も出来ない
俺はアキの膝の上でキリキリと顔だけを姉に向け、アキは俺越しに姉ちゃんを見た
引き攣った顔は気を使うようにそっと扉の向こうへと消え、扉を閉めた際の微かな風が俺の後ろ髪をふわりと揺らした
「ぅ………あぅ……………」
「すげえとこ見られちゃったな」
「うぁ…………ぁ………」
「あは、翔すげえ真っ赤じゃん」
気付くと俺の顔はまるで湯でダコのように真っ赤に染まっている
そしてアキの膝からゆっくりと降りると、そのままベッドにダイブしぐにゃりと体を萎らせてふかふかの枕に顔を埋める
み、見られた……………っ!
ちょっとエッチなチューしてること、見られた……っ
「お、でかいケツ発見、もちもちだ」
「さっ、触るなバカ!お前風呂行け!」
「下着貸して欲しいな〜」
うつ伏せになってピクピク震える俺の尻をガシッと鷲掴みにして揉むアキ
思わずビクンと体が震え気持ちよくなってしまいそうになるが、そんな快感を振り払うようにアキの手を振り払う
そのまま素早く立ち上がるとアキに向かって取り出した下着やTシャツなどの着替えをぶんっと投げつける
そして再びベッドに飛び込むと薄手のタオルケットを頭から被りシッシと手を振ってアキを部屋から追い出した
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