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布まんじゅう

「ア、アキ……っ、ん、ちょっ………」 「相変わらず綺麗な肌、すげえ気持ちいい」 「んん……ちょっ、何か触り方……っ」 「こうやって撫でられるの好きだもんな?」 罰ゲームであるはずのくすぐり攻撃は、いつしか体への愛撫へと変わっていた 俺の腰から胸にかけてのラインを指先でするりと撫で素肌を柔らかく這うのはアキの大きな手 くすぐったいけど、ふわふわして気持ちがいい 自然と漏れてしまう声は抑えることを忘れ、甘くていやらしい空気に心ごと流されてしまいそうだ 「な、翔、シたい………」 「だめ……っ、ここ俺んち…………っ」 「な、翔は欲しくねえ?ここにオレの」 「あぅ……ッ、そこっ、だめ………っ」 時間は夜10時 健康志向な母さんはもう眠りについても良い時間だが、隣の部屋の姉ちゃんはそうはいかない それに家族みんなが寝たからと言って、同じ家に人がいる中で行為に及ぶなんてそんなこと それなのにアキは甘えるような声で俺にそう強請り、開かせた脚の間から尻の穴のあたりを指でこすこすと強めに撫でてくる ぶんぶんと首を振って拒否する俺 だがそんな俺の体は正直で、まるで条件反射のようにアキに触れられるたびに体温を上昇させていく だめっ…………気持ちよくなっちゃう………っ 「ねぇ翔、あたし明日………ってまたか」 「ちょっ、姉ちゃ……ッ」 そう思った瞬間、再び部屋のドアが勢いよく開いた 扉を開けた主はまたもや姉のみさき いつもいつも、この女はノックをすることを決して覚えないタイプだ なんてそんなことにツッコミを入れる余裕などあるはずもなく、俺は顔を赤くし何か言葉を絞り出そうと必死になるだけ ま、また見られた…………っ しかも俺、実家なのに危うく流されるとこだった…っっ 「もーあんたたち、いい加減にしなさいよ」 「あ、あぅ…………」 「するのは自由だけど、静かにしなさいよね」 「ごめんなさいみさきさん」 そう言った姉ちゃんははぁとため息を吐き、俺の部屋のテレビと繋がっているゲーム機のコードをぶちぶちと抜いていく 大人しく俺の上から体をどかし正座をするアキは、一見反省しているように見えるが実はそんなに反省していない そして姉ちゃんは俺の部屋からドライヤーとゲーム機を奪って出て足速に出て行く てかするのは自由って何だ いいのか、しても いや、しないんだけどさ 「するのは自由だってさ、翔」 「でもだめなの!お前あっちいけ!」 「む」 「む、じゃないから、早く布団敷いて寝ろっ!」 危うく流されそうだった空気を姉ちゃんが割ってくれたおかげで、俺は正気を取り戻す そしてベッドの上からアキを叩き落とすと、ベッドの隅っこでタオルケットを頭から被り丸くなる そんな俺をアキがつんつんとつついてくるが、その手もベチンと振り払って再び右手を布まんじゅうの中に納める 仕方なく諦めたのか、ずりずりと布団を敷くような音が聞こえた ほんの少しだけ、アキが粘って襲ってくることを期待したなんてことはないのだ、絶対の絶対に 「まだ電気点けててもいいか?」 「……………ん」 「漫画読も、続き気になってたんだ」 「…………」 時間は10時半 まだ健全な高校生が眠るには早すぎるようで、アキは俺に許可を取りさっき読んでいた漫画を再び開いた 少しだけちらりと布の隙間からアキを除き見るが、アキはこれ以上襲ってくる様子は無くベッドを背もたれにして大人しく漫画を読んでいる アキ、何見てるのかな………… ちょっとだけ……………… そんなアキが何を読んでいるのか少し気になった俺は、布を頭に被ったままずりずりとアキの方へ近付いていく そして丸くなったまま顔だけを布の外に出しアキの背後から漫画を見る 「うわっ、いつの間に」 「俺その漫画好き……」 「な、これ面白いな、オレはじめて読んだ」 「続き、貸してやってもいいけど」 背後の俺に気付いたアキ そんなアキの肩に顎を乗せて喋ると、アキは片手で漫画を持ちながらもう片方の手で俺の髪をナチュラルに撫でる そして漫画の続きを貸すと提案すると、アキはやったあと嬉しそうに声を上げこちらに顔を向けた 「な、だっこだけしちゃだめか?」 「う……………」 「お願い、ぎゅってしてえの」 「…………………いいけど、だっこだけだぞ」 「やった、そっち上がっていい?」 すると再び抱っこのおねだり 正確には抱っこさせてくれ、という逆おねだりだがあまりにも懇願するアキを可愛く思ってしまった俺はそれを了承した もちろんぎゅっとするだけで、それ以上はしないと釘を刺して アキが漫画を閉じ再びベッドの上に上がる そして慣れたように俺を脚の間にすっぽりと収めると俺を背後からぎゅっと抱きしめる 何だかこの体勢はアキの家にいる時みたいで体が勝手にリラックスしていく いつの間にかアキの背もたれに安心感を覚えてしまった俺は体の力を抜いてアキが閉じた漫画を開く 「どこのページからだっけ」 「もうちょっと後ろ、修行始まるとこかな」 「ここか」 そしてアキが読み捨てた漫画を代わりに読み始めると、アキも俺の後ろからひょっこりと顔を出して物語を読んでいるようだ どくん、と背中に伝わるアキの心音 至って穏やかなその振動が俺を安心へと導き、ますますアキとの信頼を深めていく だがそんな安らかな気持ちも、すぐにアキによって壊されることになる

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