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お婿さんとお義姉さん

「ん゛ッ、んっ……ぅ…んっんッ……!」 「はっ……はぁっ………ッ」 「う゛………ッ、ぁ、んっんっんっ……!」 「翔……本当可愛すぎ………」 それからどのくらい経っただろう オレたち2人は、隣にみさきさんがいることを分かっていながらひたすらに行為を続けた 翔は泣きながら必死に枕で声を抑え、決して拒否することなくオレに股を開き続けた オレたち2人は、明らかにこの状況を楽しんでいた 慣れない場所に 慣れない空気感 そして何より、他人に聞かれてしまうかもしれないというスリル 普段の翔ならきっと恥ずかしがって嫌がったような状況も、一度快楽に引き摺り込んでしまえばこっちのものだった 快楽に弱い翔は、そのスリルすらも快感に変えて必死に声を殺した 「ぁ………っ、ん、ンッ……!」 「ッ………!急に締めんなって……っ」 「んンッ、ぅ……っ、んっんっ………!」 隣からカタンと聞こえてきた小さな物音にすら敏感に反応し、きゅっと後ろを締め付ける翔 肉厚な壁にぎゅっと締め付けられたオレのものはビクンと胎内で震え、徐々に2度目の射精感を呼び覚ましていく 隣にいる実姉が起きていることを分かっていながら止めないのは、翔がすでに堕ちている証拠だろう ああやべえ………… 何か変な性癖目覚めそう…………… そう思いながら汗で濡れた髪をぐっと掻き上げると、翔が枕をきゅっと抱きしめたまま潤んだ瞳をこちらに向けているのに気付いた 「ん……?どした、キス?」 「あ……ちがくて……その……………」 「んっ?」 「………………かっこいいなって、思っただけ…」 オレはてっきりまたキスのおねだりの視線だと思ったのだがどうやら違うようだ 翔はオレの問い掛けにゆっくりと首を振り、代わりにオレの腕にちょこんと触れた そして今更恥じらうような様子で枕を顔隠しに使いながら瞳を泳がせてそう言った その瞬間、オレの心臓はぎゅんっとときめき それと同時にオレの股間も一気に硬さを増した 「ひぁっ………!なんかおっきく………っ」 「もう、翔のせいだぜ、そんな可愛いこと言うから」 「おっ、おれのせい…………っ?」 「そ、だから今夜は目一杯抱かせて?」 ベッドの上の布まんじゅうの中で、二人揃ってヒソヒソと小さく会話する 翔は無意識なのかオレを可愛い顔で上目遣いしながら、無意識にずっとオレの体をぺたぺたと触っている かっこいい、だなんて 言われてはじめて嬉しいと思った 不似合いな黄色い歓声は、いつも煩わしかった だけど翔に、好きな人にかっこいいと言われるのは男冥利に尽きると言ったもんだ それからオレたちの情交は更に盛り上がって、街の明かりが全て消えるまでしっぽりと繋がり愛し合い続けた 深夜 行為を終えてそのまま倒れるように眠りに着いたオレたちだったが、オレは尿意を催しベッドからそっと体を起こしていた そして隣ですうすうと眠る翔を起こさないようベッドから立ち上がると、部屋の扉を開けて静かに廊下へと脚を踏み出す 「あ」 「あっ………」 すると偶然、同じタイミングで隣の部屋から翔の姉であるみさきさんが顔を出した そしてほぼ同じタイミングで顔を見合わせ、お互いの姿を見比べる 黒い下着からは大きな胸の谷間が覗き、薄手のショートパンツからは真っ白な脚が晒されている いつもと違ってメイクをしていない顔は、やっぱり翔とよく似ているようだ 「どこいくの」 「あ……お手洗いを借りようと………」 「そ」 翔のTシャツが入らず上半身裸姿のオレを、みさきさんは舐めるように見つめる そしてオレの鎖骨のあたりに付いたキスマークを見つめ、ぱちりと大きな瞳で瞬きをする するとオレにそう尋ねたみさきさんはオレの回答を聞くなり頷いてなぜかトイレへの道のりを塞いだ 「丸聞こえだったわよ」 「あ………えっと…………すんません……」 「いいけど、別に」 「あは…………………」 そして告げられる、当たり前の事実 分かっていた 隣まで声が聞こえていたことくらい それにとても鋭い人だ、オレたちが致していることなど物音ひとつで察しただろう オレは目の前で腕を組みそう告げる女性に一応といった様子で謝った するとそれを余裕そうな様子でかわしたその人は腕を組んだままトイレの扉にもたれ掛かる 「あんた、聞こえるの分かってしてたでしょ」 「あ………………」 「やっぱり、あんたも結構性格悪いわね」 「はは…………返す言葉もないです」 そしてその鋭い人は、オレの魂胆をも見破った オレは、わざと声が聞こえるよう仕向けた オレと翔がとにかく愛し合っていて、お互いの全てを見せ合える関係だと他人に証明しておきたかった 絶対に手放すつもりなどない、と誰か他の人間に言い聞かせておきたかった 近い将来のために だがそんなオレを性格が悪いと称しても、みさきさんに怒るような仕草は見られない むしろふふんと得意げに笑ってその大きな瞳をきゅっと細める 「やっぱり翔には、あんたがお似合いよ」 「…………」 「翔は純粋でお利口だから、あんたくらい性格悪い奴の方がバランス取れていいわ」 そう言った彼女の言葉を、オレは心の底から嬉しく思った どんな理屈であっても、見た目だけでお似合いだと判断されることにずっと引っ掛かっていた 性格も相性も、関わってみなければ分からないことだらけなのに芸能人のように持て囃されるのは嫌だった だけどはじめて、他人からオレたちの仲をお似合いだと認めて貰えたんだ “性格が悪い”なんて正直な言葉を貰ったのもはじめてだ だからやっぱりオレは、翔が欲しい そして、みさきさんという姉も欲しくなった オレにそういう下心の籠った視線を向けることのない、自身の弟優先な女性はオレの姉として最も理想的だ 「これからも翔のこと、たくさん愛してあげてよね」 オレの理想の姉はそう言い残すとトイレの前から体をどかして脱衣所へぺたぺたと歩いて行った その日翔の家族とはじめて深く触れ合って、やっぱりこの人たちの家族になりたいと思った オレにとって今日は、とても大切でとても有意義な日になった

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