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九条家④
「Ωがなんだって?」
親衛隊のΩを否定するような言葉に瑠加の声色が変わった。
低く、鋭い声色だ。
Ωの地位は彼らの両親が学生の頃より就職率やΩお断りの公共施設を廃止など多少は改善はしたが、このようにΩを毛嫌いし、α至上主義を謳う者はまだまだ多い。
特にαの多いこの学校では……。
「なぁ、Ωが何つった?」
「あの………」
初めて目撃する彼の怒りがあまりの迫力に気圧される。
その隣の瑠依も同調するように口を開く。
「俺らはそうやって中身を見ないで人を判断する奴は大嫌いなんだよ。
親衛隊か何か知らないが、お前らが消え失せろ!!」
「…………っ!!」
その言葉に親衛隊は皆黙ってしまい戸惑っている。
だってαの彼らがΩを庇うのだから。
「あのさ、聞こえないの?
消えろって、目障り!!」
瑠加の一押しで親衛隊やファンは周りから離れていった。
ただ1人を除いては……。
「あ、あの……あ、ありがとう…ございます……」
Ωの男の子が二人に頭を下げる。
よく見ると童顔で可愛らしい顔だ。
「別に、俺らの母親がΩだからな」
「え?」
「お前が否定されんのは同じΩの母親が否定されてるってことだろ?
それ、Ωの血を引く俺らへの侮辱でもあるわけだから腹が立ったってだけ」
双子の母、希一がΩだと言うことは公にはなっていない。
九条家は碧が希一を妻とするのを認める代わりに公にはしないと約束させたからだ。
それには碧が反発したものの、希一の父である秀一が会社の立場など考えそれに頷いた。
勿論、秀一も納得していないが社会がΩを認めるようにならなければ逆に希一が批判に晒され苦しむと考えた。
だから双子も学校で母がΩと言うことを公言するつもりはなかった。
それでもΩの少年へその事実を話してしまったから瑠加は人差し指を唇に当てて「この事は内緒な」と微笑した。
「はい………」
それがまたあまりにも美しいからΩの少年は息を飲み、暫く方針状態に陥るのだった……。
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