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九条家の末っ子③
自分がΩであることはどうやったって変えられないし、それは親のせいでも自分のせいでもない。
だから今の現状を受け入れて前に進むしか無いのだ。
そして欲しかった筆箱も買った蘭は陽介と少し寄り道してソフトクリームを食べた。
「美味いか?」
「うん。ありがとう陽介」
美味しそうにソフトクリームを食べる蘭を見て微笑む陽介だが内心気が立っていた。
何故なら後ろから放たれる視線が蘭を捉えていたから。
念のため首輪を着けている蘭だからΩだと分かってしまう。
蘭は気づいていないようだが後ろから蘭を見ている男は陽介と同じαだと気配で分かった。
どういうつもりで蘭を見ているのかは分からない。
けれど何としてでも守らなければならない。
大切な主であり友人の息子なのだから。
ソフトクリームを食べ終わり帰りの電車に乗り込む二人は席に座る。
「なぁ蘭」
「ん?」
「お前は気づいていないだろうが、お前を狙ってるαがいた」
「え?」
こんなこと言う必要は無いのだろうが陽介はあえてそれを伝えた。
一人で出歩くのがΩにとってどれだけ危険なことかと身を持って知って欲しいから。
「気が強いことも、正義感が強いのも好奇心旺盛な事も大いに結構。
けどな、どうやったってΩはαには勝てない。
ごめんな、怖がらせるようなこと言って」
「ううん。俺もごめん。
俺なんにも分かってなかったから……
帰ったらお母様とお兄様に謝る」
「いい子だ……」
両親や兄弟だけではない。
蘭を大切に育ててくれるのは陽介だって同じ。
彼はいつもこう言う汚れ役を勝手出てくれる。
だからこそ、奇麗事だけではない事もちゃんと知ることが出来るのだ。
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