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運命とは奇なり③

「おい、何でだよ? 理不尽だろ!!」 「理不尽なのがこの世の中だよ。 このまま言い合いになってたら立場が弱いのは僕達。 下手したら周りに目を付けられて何されるか分からないんだよ?」 「そんなの……」 おかしい……。 Ωだから理不尽な事も我慢しろなんて蘭はどうしても解せなかった。 「九条君、僕も坂下君と同意見だな。」 そう戸倉が言った。 「確かに僕もおかしいと思うよ? でもね、これで二人の身に何かあったらどうするの? もう少し考えてから行動した方がいいよ。」 二人とも理不尽だけどしょうがないと言う意見に蘭は理解しつつも納得出来なかった。 分かってる。 分かってるけどこんなことで差別されるのはどうしても嫌だった。 「……っ。 ごめん、今日は一緒に食堂行けない。」 そう言って蘭は食堂とは反対の方向に足を走らせた。 二人が自分を呼ぶ声がしたが追ってくる様子はなかった。 少し頭を冷やしたいと人のいないところへやって来た。 校舎の裏側で一際大きな木の木陰に腰を下ろした。 「はぁ……。」 家族にも言われてた。 あまり問題を大きくしては駄目だと。 これで母親が呼び出されたら最悪退学にでもなるのだろうか? 余計な事をしない方が良いのは自分でも分かってるのに止められない。 同じΩである尚にも止められて蘭は急に孤独感に苛まれ涙が出た。 帰りたい……… そう実家に電話すればきっと兄二人が駆けつけてくれるだろう。 でもそんなものは甘えだ。 始まったばかりの学校生活を終わらせるわけにはいかないのに……。 「兄様……。」 体操座りになり膝に顔を押し付け涙が止まるのを待っているとざっと足音が聞こえ顔を上げると蘭は思わず固まってしまった。

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