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運命とは奇なり④
見上げた先に見えた一人の男子生徒。
目を丸くしてこちらを見るその男は
制服を着崩して髪は金色だが根元が少し黒くなっていることから染めているのだろう。
それに目付きも鋭い。
所謂不良の様な風貌だがとても綺麗な顔立ちをしている。
男らしい彼は例えるなら獅子だろうか?
威風堂々とした姿がそう映り圧倒的なオーラに気圧される。
だがその容姿だから蘭は固まっていたんじゃない。
怖い。
確かにそれもあるが、ぶわっと香る甘美な香りと身体の奥底が熱く疼くような感覚。
「あっ……。」
そう言えば母が言っていた。
父に、運命の番に感じる物。
それが彼に感じる物と似ているような気がする。
いや、その通りだ。
魂が彼を欲しているのだ。
「お前、Ωか……?」
男の低音ボイスの一言で体がビクッと震えた。
「あ…んた……は……」
鋭い瞳が蘭を捕らえながらゆっくりと近づいてくる。
そして彼の手が蘭へと伸ばされる。
だが、その手は蘭へ届く事はなかった。
パシッと鈍い音が聞こえじんじんと痺れる自分の手を驚いたように男が見る。
蘭が自分に男の手が届く瞬間に振り払ったのだ。
「俺に触るな変態!!」
「………っ!?」
まさかの言動に男は思わず固まった。
蘭の反抗的な態度もそうだが変態と言われた事に絶句したのだ。
「俺に変態とか言う奴初めてだ。
つうか、ここで拒まれるとか思わなかった。
お前、Ωだろ?」
「だから?」
「だから……?アホかお前。
お前も感じんだろ?運命だって……。」
「……っ。」
そうだ。
彼の言う通り、この人と番になると一目でそう思った。
思った、が………
「誰がお前なんかと番になるかよ!!」
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