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運命とは奇なり⑧

結局蘭はあの運命の相手のαに再会することもなく、もう彼のことは忘れようと思っていた。 どうせ上手くやっていける自信もないし、第一好きになれないのだから仕方ない。 だが、そう簡単には忘れさせてはくれなかった。 昼休みいつものように尚と戸倉と一緒に過ごし廊下を歩いていると周りがざわざわし始め、何かあったのかなと二人と話していると、周りが見ている方向を見て蘭は驚いた。 「あ…いつ……。」 会いたくないあのαに再び出会ってしまった。 相手も蘭に気づいたようでじっとこちらを見つめる。 だが彼はぷいっと顔を背けさっさと立ち去ってしまった。 興味が無いと言ったあの態度、本当にムカつく。 それにしても皆あのαを見ていた。 ここではαは珍しく無いのにどうしてだろう? それと彼が運命の相手だったのだと尚と戸倉に言うと戸倉は青ざめていた。 「あの人高嶺礼司(たかみねれいじ)だよ。」 「高嶺……? 高嶺ってあの……?」 「そう、あの高嶺!!」 あの高嶺とは、九条家と並ぶ財閥の事だ。 九条家と同じく知らぬ者はいないと言う程の菓子、玩具メーカーの家柄だ。 特に高嶺の和菓子は人気で海外にもいくつも店を出しており、その繊細な味と美しい見た目が受け大ヒットしている。 そして最近だとAIを活用した玩具も話題になり飛ぶように売れている。 「あんな不良が高嶺?」 あの優雅な和菓子とは全く縁遠いと言うほどの品の無さに驚く。 まぁ自分が言えた事では無いが。 「あれでも跡継ぎらしいよ? まぁただ、見た目通り怖い人だから怒らせたらまずいことになるって噂だよ。」 金や名前で何でもやりたい放題なのかと蘭は腹が立つ。 「でもそれでも流石α。 成績は学年トップだし、見た目不良だけど綺麗な顔してるから女の子に人気だし、男子からも妙に慕われてるし。」 「ふ~ん。」 凄いんだろうがあまり興味は湧かなかった。 だって身近に優秀な父や兄、姉を見てきているのだから何も思わない。

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