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止めどなき愛②

久々の家族団欒かと思ったが、兄二人と父は仕事が立て込んでいるらしく先に夕飯を食べる事となった。 希一の作る料理は質素ながらも一番美味しい家庭の味だと思う。 食事が終わる頃漸く父と兄達が帰ってきた。 「ら~ん!!」 「兄様!!」 帰って来るなりスーツのまま蘭を抱き締めて来た双子の瑠依と瑠加。 「会いたかった!!」 「ああもう可愛い。 可愛すぎる!!」 ブラコン兄弟は可愛い弟を力いっぱい抱き締めて来て正直苦しくて食べたものが出そうになった。 「その可愛い弟が潰れてるが?」 「うわっ、ごめん!!」 後ろから呆れるように父、碧がスーツを雫に預けていた。 「父様、お帰り!!」 「お前もな。」 碧の呆れ顔が一変、笑みを浮かべ蘭の頭を撫でた。 「碧さん、瑠依、瑠加、ご飯出来てる。 玲香と蘭は今の内にお風呂に入っておいで。」 希一が三人の為に夕飯を用意し始めた。 すると玲香が蘭を傍に呼んだ。 「久々に一緒に入るか?」 「おい待てクソ女!! 蘭と入るのは俺だって!!」 玲香が蘭を誘うと慌てて瑠加が割って入ってきたが、希一にご飯が冷めるから先に食べなさいと咎められるが譲らない。 しかもそこに瑠依まで入ってきて瑠加に同調するのだから面倒になった。 さてどうしたものかと考えていると双子の前に雫が出てきた。 「全く、社会人にもなってまだ幼稚な我儘をおっしゃいますか…… ……躾が足りませんでしたかね?」 にっこりと笑う雫とは対照的に双子は青ざめながら凍りついた。 「待って待って‼ちゃんとする‼しますって‼」 「分かったからその笑顔は止めろ‼」 幼い頃からマイペースで言うことを聞かない双子に希一と碧は手を焼いていたが、そんな時雫が注意すれば素直になる。 『お前、何をした?』 『さて、何の事です?』 雫に対しては逆らったりしない子供の頃の双子を見て碧は目をピクピクさせ今更ながらなんて恐ろしい奴とその時思い知ったのだった。

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