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縁(エニシ)⑩

誰にも零さなかった好きでΩになったんじゃないと言う本音がつい、口を衝く。 その後に激しく後悔し、涙が一滴頬を伝う。 こんなこと彼に言う必要なかったのに、なぜだか言うべきでないことも言えてしまう。 すると高嶺は何を思ったのか蘭の頬に伝う涙を指で拭った。 「お前って強がってばっかで甘えるの下手そうだよな。」 「なんだよそれ。」 「本当はしんどいくせに誰にもすがらないで勝手に自滅してる感じ。」 「………。」 図星だ。 家族には心配かけたくないし兄、姉に負けたくないと勝手にライバル視して背伸びしてる。 けれど、 「お前に指摘されたくない。」 出逢って間もないあまり知らない相手に核心を突かれるのは不愉快である。 だが、そんな心情とは裏腹に目の前の男はクスクスと笑い始めた。 と言うか笑った顔を初めて見た。 いつも、眉間にシワを寄せて怖い顔ばかりしてるのに。 「な、なんだよ……?」 「いや、俺に悪態つく奴なんてお前だけだからおもしれぇと思って。」 「は?」 「俺の周りは皆媚び諂う奴ばっかでうざいのに、お前は俺に対等に向かってくる。 いや、うざいのはお前もそうだけどな。 でも、面白い。」 「おい、なんか一言余計な事言わなかったか?」 何故言わなくていい一言を言うのかとカチンと来るも、彼も彼で高嶺の花と周りから一歩置かれて孤独だったのだろうと感じた。 だからこそ、高嶺は対等に話せる蘭に興味を持ったのだろう……… 「じゃあ、これからでのお付き合い宜しくお願いします。」 「……ああ、な。」 ※取り敢えず一旦ここで蘭の話しは終了とさせて頂きます。 他の小話を挟んだ後また蘭の話しの続きを書けたらと思っております。

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