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息子さんを下さい②
朔がお茶を淹れる間何とも言えない空気が流れる。
その重い空気を破ったのは秀一だった。
「二人とも学校はどうだ?」
「え、うん。変わり無いよ。」
そんな他愛ない親子の会話がなされ、碧も何か言わなければと口を開いたとき朔が紅茶を4つお盆に乗せて持ってきた。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
朔はにっこり笑うとと秀一の隣の席に着き、その後に先程の碧の土産のマカロンを九条家の従者の安藤棗がお皿に乗せてテーブルへ。
碧は落ち着こうと紅茶を頂くと口の中にカモミールの香りが広がる。
カモミールには確かリラックス効果があると記憶している。
もしかしてガチガチに緊張している碧に朔が気を利かせたのだろうかと思った。
この両親の元で育った希一だからこんないい子になったんだろうなと彼の原点を見た気がした。
朔のお陰で落ち着いた碧は改めて背筋を伸ばした。
「あの、改めまして、希一さんとお付き合いさせて頂いてます碧と申します。
えと、ご存知の通り先日プロポーズをさせて頂きましたが、あの場を乱してしまったことをお詫び致します。
申し訳ございませんでした。」
碧は九条家のパーティーで勝手に希一を招いてプロポーズし、周りを振り回してしまったことを頭を下げ謝罪した。
その様子を秀一は黙って見つめていた。
「それにまだ僕達は学生で番にもなってませんし、結婚も希一が20歳になってからと思っております。
ですが僕は、希一と行動を共にし彼の優しさや笑顔に癒され、僕の知らない世界を教えてくれて……
けれど、僕の未熟さ故に傷付けた事もありました。
それでも彼を心の底から愛し、生涯を共にしたいと思うようになりました。
もう二度と彼を傷付けたりはしません。
こんな僕ですが、どうか希一さんとの結婚をお許し頂けないでしょうか?」
碧は思いの丈を精一杯ぶつけた。
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