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確執④
初めて希一と会話をした広実は彼がΩだとかそんなことは気にならなかった。
九条家に相応しい人間だと、碧が彼を好きになる理由がよく分かった。
碧と雫は広実を玄関まで送る。
希一と陽介は双子が泣き出してしまったのでリビングでお別れとなった。
「ああそうだ!!
お前達に会えたのが感動的ですっかり忘れていたよ、これ。」
そう言って広実が鞄から取り出したのは出産祝いの分厚い封筒。
一体いくら入っているのか、物凄く分厚い封筒にツッコミも入れず碧はありがとうございますと受け取った。
「じゃあまた。
希一君に宜しくね。」
「はい、また………
今度は母様も一緒に……」
絞り出すような声で発せられた言葉に広実は言葉に詰まった。
彼はまだリアを母親と見ていてくれている。
その事実が堪らなく嬉しくて、切なかった。
「ああ、今度はリアも連れてくるよ。」
そう言うと広実は車の後部座席に乗り込み、待機していた運転手に出してくれと命じ、車は発車した。
家に帰るとリアに今日の事を報告したが彼女は不機嫌な顔を見せるだけだ。
「ねぇリア、僕は思うんだ。
Ωだから劣ってる訳じゃない。
そうやって劣ってると決めつけるからそう見えるんだ。
実際希一君と話してみて彼はとても賢くていい子だよ。」
普段なら不機嫌なリアにあまり強く言ったりしないが今回は自分の考えを伝えた。
「ねぇ、見て欲しいんだ。
写真いっぱい撮って来たよ。
ほら、碧にそっくりだと思わないかい?」
広実は撮った双子の写真を見せた。
しかし、反応は何も返ってこない。
それでもめげず見せているとリアは何を思ったのか、少しだけ口許を緩めたのを広実は見逃さなかった………
きっといつか和解出来ると確信した瞬間だった。
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