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変化⑤
「ただいま」
家に帰ると希一が出迎えた。
他の皆はまだ仕事や学校で帰ってないみたいだ。
取り敢えず猫を入れたキャリーバッグをリビングまで運んで来たらキャットタワーとケージが置かれていた。
「取り敢えずキャットフードとかシートとか買っといたよ」
「ありがと」
早速猫を出して様子を見ていた。
最初は戸惑って隅っこに隠れていたものの大分慣れたようでキャットタワーに登っていた。
それから兄達も帰ってきて熱烈な歓迎を受けた蘭はこの日家に泊まった。
「じゃあね、いい子にしててね」
「にぁー!!」
翌日、学校に戻らなければならないので家を出る前に猫をいっぱい撫でてやる。
するとそんな蘭を見て希一が話し掛けてきた。
「ねぇ蘭。
この子うちで飼ってもいいんだよ?
蘭だってまた会いたいでしょ」
「………ん~
いや………」
「確かに、いずれ別れは来るけど、それ以上に得るものもあるよ?
折角蘭に懐いてるのに………」
死は必ずやってくる。
それが嫌で動物を飼うのを諦めていた。
でも、やっぱりこの猫を見て可愛いなって思うし、手放したく無いって思ってるのも事実。
そう思ってても中々うんとは言わない蘭に希一はこう言った。
「どうせ面倒を見るのは俺だし、俺が引き取る。
これでいいでしょ?」
「え?」
「終わり!!
そろそろ出る時間だよ。
ほら、また会いに帰ればいいから!!」
有無を言わさず希一が引き取ることになってしまった。
だが、ここまで言わないと頑固な蘭は首を縦に振らないから仕方がない。
損な性格だと思う。
どんなに話を聞いても家族にでさえ遠慮して言わないこともある。
だから何でも話せる相手が出来るといいのになと希一は思う。
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