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魚心あれば水心①

クンクンと蘭の事を確かめるカイルに蘭は触ってもいいかと高嶺に尋ねる。 「ああ」 「初めまして。 俺、蘭です」 そう挨拶しゆっくりとカイルの口許に手を持っていき、触っても大丈夫そうだと分かるとそっと頭を撫でてみた。 「ふかふかモフモフ…… 可愛いな」 意外と人懐っこく、大人しく撫でられるカイルに既にメロメロの蘭は目的地に着くまでカイルと戯れた。 着いた先は郊外で木々が生い茂る場所だった。 車から降りるとカイルは何処に行くのか理解しているのか嬉しそうに高嶺を早く早くと急かすように進んでいく。 蘭もその後を追い着いていくと高い柵の前にやって来た。 そこには鍵の掛かった門があり、傍には関係者以外立ち入り禁止と書かれた看板が設置されている。 施錠されたその門の鍵を志木が解くと高嶺はカイルを連れて入っていくので蘭も着いていく。 先へ進むととても広大なグラウンドが現れ、その周りを木々が囲っていて、まるでゴルフ場にも見えた。 「なぁここって?」 「うちの土地。 取り敢えずカイルの遊び場になってる」 なんて広いドッグランだろうか…… しかもカイル専用だから世間は驚くだろうが、蘭もとんでもないお坊ちゃんだ。 それほど驚く事もない。 そして志木が持ってきたバッグからカイルのおもちゃを取り出す。 ボールやらフリスビーやらカイルの好きなおもちゃが色々入っている。 高嶺はその中のフリスビーを手に取るとカイルは一段と嬉しそうにはしゃいでおり、早く投げてとばかりにもう走っている。 そんなカイルに高嶺が勢いをつけて遠くにフリスビーを飛ばすと、それを追いかけてカイルが走りキャッチして戻ってくる。

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