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魚心あれば水心③

1時間程カイルと遊んでそろそろ帰ろうかと言うことになり、志木がどうせなら高嶺邸でお茶でもどうかと誘ってくれたので厚意に甘える事にした。 だが、ふとここで蘭は思った。 「あのさ、俺がお前の家に行ってもいいの? だって………」 自分は九条の人間でΩ。 なのに犬猿の仲と言われる高嶺の家に入っても大丈夫なのだろうか? 「別に問題無い。 両親は結婚記念日で海外旅行だし、弟はダチんとこに行って夜まで帰らねぇ」 「へぇ…… てか弟いるんだ」 「ああ……今、中三」 知らなかった。 考えれば、一応運命の相手なのに本当に何も知らないんだなと思う。 再び車に乗り高嶺の家へと向かい、大きな屋敷に辿りついた。 カイルは志木が外の足洗い場へと連れて行き、二人は屋敷の中へと入る。 広々とした玄関は蘭の家と同じくらいの広さがある。 至るところに飾られている高そうな壺や絵画などは彼の父の趣味なんだそうだ。 リビングで一休みし、志木の淹れる紅茶を飲みながらカイルとも戯れた。 「なぁ高嶺」 「ん?」 「今日はありがとな。 楽しかった」 「……ああ」 本当に楽しそうに笑う蘭に高嶺は少し戸惑った。 これだけ悪口言い合う仲なのに、屈託のない笑顔で感謝されるのだから…… 変な奴…… 高嶺の心にそう刻まれると同時に裏表のない彼の人間性に居心地の良さも感じた。 高嶺の家でお茶したあと蘭を家の近くまで送り届け、この日は別れた。

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