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名家③

高嶺、九条の両家の跡取り同士が顔を合わせた。 「……高嶺の令息が来てるってマコっちゃんが言ってたけど、君がね………」 マコっちゃんと言うのは主催者の誠の事だろう。 「電話、いいんスか? 俺が来たから切ったんですよね」 「別に、弟に電話してたけど俺らもう帰るし。 寂しがってるみたいだし」 寂しがってる…… 電話の様子じゃそうは感じなかったが…… そう思ったが、言葉を飲み込み「そうっスか」と一言だけ答えた。 しかし、弟と言うのはやはり九条蘭の事か…… 「じゃあ、俺ら帰るからマコっちゃんに伝えといて」 そう言って二人は帰っていった。 誠に伝えといてと頼まれた高嶺だが、自身も帰るつもりで、面倒なのでメッセージで一言「九条の双子帰るって」と送り、さっさと帰った。 「ただいまー」 友人の誕生日より弟との時間を優先した双子は早々に帰宅し、愛しの蘭を抱き締めた。 「よかったの?もう帰ってきて…… 友達の誕生日でしょ?」 「そんなのはどうだっていいよ。 俺らは蘭がいればいいの!!」 どうやら寂しかったのは蘭ではなく兄の方だったようだ。 すると双子はこんなことを話し始めた。 「そう言えばさ、今日高嶺の御曹司来てたんだよ」 「え?」 高嶺の御曹司と言う言葉に蘭が一番反応した。 高嶺ってあの高嶺だよな…… 兄の話しに蘭は心臓が大きく跳ねる。

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