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花標・5
「そんなの、あってないようなもんだろ!?大体あんたがオレみたいなのは使えないって言ったんだろうが!」
確かにオレは一時、色子衆に所属していたことがある。
だが昔から愛想はなく、かわいげなんてあった試しはないし、同年代より幾分身体も大きかった。そのくせ快感には弱く、床技なんて仕込まれようにもちっともついていけなかった。
幸い身体能力はそこそこ高かったため、武闘の方では腕を上げることができたのだが。
「当たり前だ。危なっかしくて見ていられない。お前みたいなのはすぐに囲われるのがオチだ」
実際、蔓に捕まってるじゃねえか、と三椏は言った。
足の間に入り込んだ三椏が肌の柔らかいところばかり撫でてきて、腰が震えた。弱いところはすべて知り尽くされており、身体はすぐに熱を持った。
「う…っ、くそ、離せ…!」
ぱくりと前を口に含まれ、身体から力が抜ける。隙をついて蜜をまとわせた指が後ろに入り込み、柔らかくなるまで弄られる。驚くべき手際のよさだ。
重ねられる快感にぼやける視界。
荒く息を乱しながら悪態をついていると、がり、と胸の尖りに歯を立てられた。
「違うだろ、辛夷。こういうときはなんて言うんだっけ?」
「い…っ!あ、き、もちい…っ、ああっ!」
口に出してしまうとそこからぐずぐずと崩れていくようだった。
「あ、あ、だめだ…!」
「お前のいやらしいところを見ているのはオレだよ。ほら、怖くないだろ?もっと乱れてみせろ」
耳に吹き込まれる言葉は、過去何度となく囁かれたもので、身体が無意識に三椏の言葉に従おうとする。
ぼろりと頬に落ちた滴に唇を寄せられる。
「…気持ちがよくて泣くのは変わらないんだな」
ばさりと着物を脱ぎ捨てて、三椏の鍛え上げられた身体がすべて晒される。
そのままぐいと腕を引かれて、寝転んだ三椏の腹の上に促された。
「あ……!」
三椏の昂りに両手を伸ばし、何度か擦り上げてから自ら濡れた後ろに導く。
「ん、んん…っ」
ぐっと体重をかけて大きいものを飲み込む。びりびりと快感が背筋を駆けて、顎が跳ね上がった。
「ふ…っ、いいよ辛夷、気持ちいい…」
蔓はこんなとき、顔に似合わずいやらしい、と笑ったが違うのだ。
「んん、っ!」
三椏の胸に手をついて大きく腰をくねらせると、支えるように手が添えられる。
「あ、あぁ、あ…っ!」
「は、相変わらず、やらしいな…っ」
快感を追ってしまうともう止められない。汗にまみれて尻を揺らす様は発情期の獣そのままだ。
好きなように動きながら、ぱたぱたと涙を落とすオレの痴態を下から見つめる三椏。
目が合って唇を寄せると、すぐに舌を誘い出されて絡め合う。
ぞくぞくした。
「うあ…っ、いく…!」
三椏の腰に深く尻を押し付けながら、自らの濡れた昂りを擦り上げる。びくびくと全身を震わせながら白いものを吐き出すと、仕方ないな、と三椏は笑った。
「今夜はオレが誘ったからね、ほら、まだまだいけるだろ」
ずん、と腰を突き上げられて、悲鳴じみた声が溢れた。
***
翌朝、目が覚めると寝台の上に三椏はいなかった。
まだぼんやりとしたまま身体を起こし、髪をかき上げる。それでまだ自分がなにも身につけていないことに気付いた。
「…っ、」
身体中に残る赤い跡に顔が熱くなる。
やってしまった。昔の名残とはいえ、三椏と身体を重ねたのは失敗だった。
「起きた?辛夷」
そこへしっかりと身支度を整えた三椏が戻ってくる。そしてオレを見るなり目を瞠った。
「…抱いたのは間違いだったか」
「そうだよっ!」
「色気がありすぎてやばい、これは困った…」
ぶつぶつ言われながら着物を肩に掛けられ、慌てて前を掻き寄せる。
朝の清らかな空気が忌ま忌ましい。
じとりと横目で睨み合いながら部屋を出るなり、ばったりと蔓と茉莉に会ってしまう。
「おはよう、辛夷」
「おは、おはよう、蔓…」
―――ああくそ、蔓の顔が見れない。
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