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二、2人エッチは痛い 後

 そして…、シャワー室、な気がする――いや、多分じゃなくてしっかりとシャワー室が目の前にある。そこは旧校舎にあるとは思えないほどの清潔感が漂っていた。 「柊さん…?」  僕は意図を捉えきれず、柊さんを見上げた。 「ここ、服盗まれねーから、安心して入れよ」 「…で、でも、もう寮に帰るだけ…」 「俺が嫌なんだよ。おまえの意見は却下」  強引さは出会いの時から変わらず、逆らうとどうなるか分からないという雰囲気が漂っている。  僕には逆らうという気持ちすら湧いてこない上、ゴミを頭から浴びた人間の横にいたくないという柊さんの気持ちも理解できるため、素直に頷いておいた。  眼鏡をはずして、シャツのボタンに手をかける。でも、柊さんがベンチに座りながらずっと僕を見ていることに気付いて柊さんをちらりと窺った。   「そ、その向こう向いて…」 「却下。男同士だろ?」  男同士だとしても更衣室を使うときはみんなが着替えるからであって、一人だけ着替えるところを見られるというのは恥ずかしいと思うのだけれど、柊さんにはそれは通用しないらしい。  少し不満気な視線をいつの間にか送ってしまっていたけれど、柊さんはそれを受け止めながらも、意地悪な笑みを返してきただけだった。  下着まで脱ぎ終わって、シャワー室に入って蛇口をひねる。お湯はすぐに出てきて、湯気を部屋に充満させ始めた。  壁に備え付けられたシャンプー、リンス、ボディソープ。僕は恐る恐るそれを手に取ったけれど、全く問題なく使えるものらしかった。  それで一通り体を洗ったけれど、少し香りが強い。このまま紅茶を飲むのはもったいないな、と僕はぼんやりと考えていた。 「長げーな。女かよ」  笑いの混じった声。  その声の主は当たり前だけれど、柊さんで…。振り返れば、シャワー室のドアは開け放たれて、制服を着たままの柊さんがそこに立っていた。  制服が濡れてしまう、と蛇口を閉めたのは良かったのか悪かったのか。床が濡れてるのも構わず、柊さんが個室に入ってきて、僕を壁に押し付けた。 「いいじゃん」  柊さんは水滴がポトポトと滴っている僕の前髪を払いあげると、目を細めてさっきより楽しそうに口端を上げてそう言った。  頬を長い指先でそっと撫でられて、ゾクリと鳥肌のようなものが立つ。気持ち悪いわけじゃなくて、……よくわからない感覚。  その間も柊さんは僕から目を離さなかった。  僕はじっと見られるのが恥ずかしくて、体を縮こませながら、足元に視線を落とした。それでも柊さんの視線が突き刺さっているのをひしひしと感じた。  ふと柊さんが動く気配がしたかと思えば、柊さんが僕を囲うように壁に手を付いた。丁度柊さんの顔が僕の耳のすぐ横にあって、柊さんの息遣いが近すぎる場所で聞こえる。 「…濡れます…。…もう濡れてる、けど…」 「なぁ、ちょっと気持ちイイことしねぇ?」  からかいと艶っぽさを含んでいる声。僕の背中をさっきのゾクりとした感覚が何度も襲う。 「……気持ち、いいこと?」 「大好きな竜ちゃんとしてたんだろ?」 「竜ちゃんと…?」 「そ、俺溜ってんの。ちょっと付き合えよ」  溜まってるって…、たぶんそう言うことなのだとは思う。 「で、でも、二人ですると痛いから…僕…したくない、です…。柊さんも一人でした方が気持ちいいとおもうけど…」  たまに竜ちゃんがしようって言ってきたけど、すごく痛いから本当は嫌だった。でも竜ちゃんが毎回上手にできたって褒めてくれるから僕はそれが嬉しくて頷いてしまっていた。  基本的に一人でするものを二人でするのが間違ってるんだと思う。僕は一人でもまだほんの数回しかしたことがないけれど…。 「やっぱ、ソレ用じゃねーか」とポツリと柊さんは言ったけど、意味が分からずに返事をすることもなく僕はスルーしてしまった。 「二人でも気持ちよくなれるんだよ。俺が言うんだから間違いねぇ」  自信満々にそう言う柊さん。竜ちゃんがしてたものとは違うのだろうか。  それか竜ちゃんは僕に嘘を吐いていたのかもしれない。不良はカツアゲするって言ってたけれど、柊さんはしなかったし…。   「気持ち、イイの…?」 「一人でするよりな。俺が保証するって」  な?、いいだろ?、って耳元で言われて、またゾクゾクっと寒気が背中を駆け上がった。おばけが出た時のような寒気じゃない。そもそも僕はおばけなんて感じられないからわからないけれど。  気持ちイイならいいかなって、僕はこくりって頷いた。

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