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八、…二人ひとりエッチはセックスだった 前

 公園を出たところで呼び止めたタクシーに乗り込み2メーターほどの所で、柊さんはタクシーの運転手にを高層マンションの車寄せに入るように言った。  車内でもずっと無言の柊さんが怖くて、ちらと柊さんの顔を見てから僕は俯いた。タクシーを降りてから、柊さんはそんな僕の腕をまた掴むとエントランスホールを突き進む。指紋を認証させてエレベーターに乗り込めば、着いたのは柊さんの自宅だった。 「柊さん…?」 「シャワー、浴びて」 「は、はい…」  玄関を入ってすぐにバスルームに通されて、服を脱ぐように言われる。初めて柊さんと気持ちいいことをした時の事を思い出す。ただ、柊さんは蛇口のハンドルをひねるとどこかへ行ってしまった。  湯気が立ち上り始めたバスルーム内に足を踏み入れて、シャワーが降り注ぐ中に手を延ばす。柊さんに言われたとおりにボディソープで体を洗い、二人でするときに使う後ろも泡で洗ってから丁寧に流した。  すると、突然ザっとバスルームの扉が開いた。驚いて扉の方を向くと、そこには裸の柊さんがいて……。 「柊さん、どうしたんですか…?」  柊さんの体は一見細身に見えるのに、しっかりと筋肉が付いていてすごく綺麗だった。僕は恥ずかしさのあまり俯きながら、柊さんに問うた。 「今から気持ちイィことすんの。久しぶりだから嬉しいだろ?」  どう答えたらいいのかと考えあぐねていると、柊さんが躊躇もなくシャワーの中にいる僕を抱きしめた。直接肌が触れる感触が不思議だ。触れた場所がすごく熱く感じる。怒っていたように見えたのは気のせいなのだろうか。僕は安堵しながら柊さんの体温を味わった。  お湯がひっきりなしに伝う顎を持ち上げられて、見下ろしてくる柊さんの綺麗な瞳と目が合えば、僕は反射的に目を瞑った。思った通り、柊さんの濡れてしっとりした唇が僕に触れた。後ろ髪を撫でられて、口づけの角度が変わる。何度も触れたり離れたりしているうちに開いた唇の隙間からぬるりと熱いものが差し込まれた。 「んっ……んぅ…ん」  最初は驚いたけれど、熱くて柔らかいそれが口内をなぞれば、どうしてか鼻から変な声が出る。頭の奥の方がじりじりとして痺れているような感覚になり、身体から力が抜ける。膝に力が入らない。膝が笑うってこういうことなんだろうか。  へたり込みそうになった所を柊さんが腰に回した腕で支えてくれた。   「洗った?」  わずかに口を離した柊さんがそう聞ききつつ僕のお尻の割れ目に指を這わせれば、ゾクリと背中を気持ちいい感覚が駆け上がった。僕はキスから解放された荒い息のまま、柊さんの肩に頭を預け、「はい」と小さく答えた。  久しぶりに柊さんの指が僕の体を這う。指でなぞられる度に快感を思い出して体が震えた。 「やりたい?」 「……はい…。ずっと…ずっとしたかったんです…」  ふっと吐息だけで笑った柊さんは僕の目の前で軽く体を洗うと、僕の手を引いてバスルームの外に出た。十分に拭かず雫の垂れたまま廊下を進み、辿り着いたのは寝室。  一人には広そうなベッドに座った柊さんの膝に跨ぐように座らされると、柊さんは柊さんと僕のペニスを手の平で包み込んで一緒に扱き始めた。 「ぁ…ぁ…あ、んん、ぁっ…」 「碧、気持ちィ?」 「…きも、ち……っ、…ぁ、んっ…」  僕も息が荒いけれど、柊さんも息を弾ませていた。目が合えばお互いの唇を奪うみたいにキスする。唇が蕩けてるみたいに柔らかくて、ずっと触れていたい。  唇を合わせながら、柊さんが器用に性器を擦り上げる。頭の中が麻痺して、目の前が光に包まれたように真っ白になった。 「…ん——!!」  どくどくとペニスの先から精液を飛び散らせてしまう。柊さんも少し遅れて手の中に放った。気持ちいい。体が疼いてしかたない。 「…柊さん…後ろ、触って…」 「エロいな、碧。もう欲しいのかよ」 「…はい…」  少し小馬鹿にしたみたいに言った柊さんの手が僕のお尻を滑り降りた。けれど、割れ目に添うようになぞった指は周囲を撫でるだけで、欲しいところに刺激をくれない。どうしても腰が揺らいでしまう。  いつもみたいに四つん這いにならないと、と思うけれど、僕を支える柊さんの腕の力は緩みそうになかった。 「事実を教えてやるって言っただろ」

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