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「はぁ〜、顔面、超いってぇ〜。」
そよそよと、心地よい風が吹き抜ける土手の原っぱに横になりながら、青々とする空を眺めた。
あの後、お察しの通り、俺は如月にタコ殴りされた。
「……これで、よかったんだよなぁ…。」
きっと今頃、如月は琥太郎を慰めに行ってるだろう。…琥太郎は泣き虫だからな。
「こたろーは俺のこと大好きだからなぁ…一筋縄じゃいかねえから、頑張れよー。」
チクチク痛む胸をギュッと抑え、溢れそうになる感情にも必死に蓋をした。
全部琥太郎のため、あいつのためならこんなの全然平気だと、自分に言い聞かせる。
「はぁ……、青空からは…どんな風景が見えるんかねえ…ははっ、あははっ…!」
痛々しい笑い声は、日常の一部へと消えていき。
一人、笑いながら泣いた。
「うわっ、お前…春川!?」
「おー。」
「どうしたの、その顔!…と、髪!」
翌日、大学へ行くと、友人の千都世(ちとせ)が、俺を見て驚く。
まぁ、無理もないだろう。
「んぁー、ちょっとした喧嘩と…イメチェン?」
如月にボコボコにされた顔面は、ガーゼやら湿布やら痣やらでいっぱいだし、茶髪だった髪色は綺麗なピンク色になった。
「いったそー、整った顔が台無しだぜ〜?まぁ、髪色は似合ってるけどよー…。」
「ははっ、サンキュ。」
「…でも、本当どうした?急に…。」
「んー、心機一転つーか、ケジメっつーか。」
俺には、死ぬ前にやんなきゃいけねえことが、たくさんあるからな。
「ふーん?よくわからんけど、いいんじゃね!」
でも喧嘩は程々にしとけよ、と俺の肩を叩いて、どこかへ行ってしまった。
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