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Memory:6
「どういうこと?お前、病気なの?」
「…はぁ、とりあえず、どこか座ろうぜ。」
疑いの目を向ける千都世に溜め息をついて、俺たちは中庭のベンチへ移動した。
「…は?じゃあなに、お前、死ぬの?」
「まぁ、多少期間の前後はあっても、そんな長くはないだろうな。」
観念した俺は千都世に全部話し、途中で買ったパックジュースを飲む。昔よく飲んでた「いちごオレ」を久々に買ってみたが、すごく甘ったるくて二度と買わないと思った。
「おま…、なんでそんな大事な事…!琥太郎には言ったのか!?」
「言うわけねえだろ。」
「なんでっ!つか、じゃあ、別れたのも…!」
「ああ、俺の命が長くないからだ。」
千都世は、俺と琥太郎が付き合ってた事を知っている。そして、最近別れた事も知っている。
「お前、馬鹿なの?」
「いや、お前ほどではねえよ?」
「茶化すな、本気で言ってる。」
「…じゃあ、馬鹿かもな。」
いつもふざけて、ハイテンションな千都世だが、そんな空気は一切出さず、真剣な顔を俺に向けてくる。…だから言いたくなかったんだよなぁ、俺。お前のその顔、苦手なんだよ。
「俺は、お前らが決めた事なら何も言わねえよ。例え琥太郎が納得しなくてもな、お前の気持ちが冷めたんなら仕方ねえ事だと思う。
けど、理由がこれなら、それは違えだろ。」
千都世の前で、琥太郎に冷たい態度を取って泣かせた事がある。気に掛けてくれてはいたが、俺たちの問題に深く首を突っ込もうとはしなかった。
「わかってるよ、そんなこと。」
「だったら…!」
「だとしても、俺は琥太郎には絶対言わねえ。これが逃げてるって事も、最低な事してるって事も全部わかってんだよ。
けど、じゃあ、俺が居なくなった後、琥太郎はどうなる?」
自分の顔が歪んでいくのがわかる。
その顔を、俺は千都世に向けた。
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