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今でも覚えてる。 お前が太陽みたいな笑顔を向けながら、俺に"月みたいだ"と言ってくれたこと。 『春川は、暗闇の中で光り輝く月だよ。その光で俺を照らしてくれるんだ。』 本当に、嬉しかった。 汚い世界しか知らない俺でも、誰かを照らす光になれてた事…お前が教えてくれた。 初めてキスをして、初めてセックスをした。 付き合い出して、喧嘩も、仲直りも、全部楽しかった。 隣にいないお前が、恋しくてたまらない。 俺じゃない奴の隣で笑うお前は、お前じゃない。だから、お前の隣にいない俺だって、俺じゃない。 願ってた幸せは、こんなにも辛くて、耐え難いものだったのか。 「ねえ、聞いたー?春川くん、大学辞めたらしいよ〜。」 「え!そうなの!?なんで!?」 「さぁ?噂じゃ、風俗嬢孕ませたとか、ヤクザの女に手出して拉致られたとか…何が本当かわかんないけどね〜。」 「うわ〜、最低…。でもどれが本当でもおかしくないって思わせるあたり、なんか春川くんて変わったよね。」 「だよね。前までは硬派で一途でクールだったのに…。見事なまでの堕ちっぷり!」 「それだけ、前の恋人と別れた影響が大きかったってことなのかなぁ…。」 暫くして俺は、大学を辞めて、住んでいたアパートも引き払った。

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