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「…お前が、お前一人で決めた事だから、口出すんだよ。」
不意に、落ち着いた口調で話し出す千都世に、思わず黙る。
「お前が琥太郎と決めた事なら、俺は何も言わねえよ。
けど、お前一人で決めた事で、一体誰が幸せになるって言うんだよ。」
「………。」
「前にお前は『自分が死んだ後、琥太郎しぬほど泣くのが怖い』って言ったよな?それで嫌われる努力して、大学もやめて、家も引っ越して逃げたわけだ。」
「………。」
「じゃあ、お前が死んだ数年後、真実を琥太郎が知ったらどうするよ?お前。」
「は…?それは、ねえだろ。だって…。」
そこまで言いかけてハッとした俺は、まさか…と目を見開く。
「悪いけど、俺は全部伝えるよ。」
「っ!」
琥太郎が真実を知る唯一の方法。それは、俺以外の、真実を知ってる人から聞くこと。
「だってフェアじゃねえもんなぁ?」
「て、めぇ…!」
「そうだろうが!俺、何か間違った事言ってるか!?」
「…っ、」
何も言えなかった。俺の計画を邪魔しようとしてる千都世が、正論だ。でも、そんなの…。
「…琥太郎が、幸せになれねえ…。」
俺のせいで、一緒に添い遂げてくれる人を見つけないかもしれない。
俺のせいで、自分の心に蓋をしてしまうかもしれない。
俺が琥太郎の足枷になる…、そんなのは絶対に嫌だ。
「じゃあお前は、好きな奴に突然突き放されて傷付けられた挙句、なんの真実も知らないままお前を恨み続ける琥太郎が、幸せって言えるのか?」
「………。」
「真実を知ろうが知らまいが、今幸せじゃない琥太郎に、過去の幸せを超える幸せが訪れると思うのか?」
「……っ、」
「…なぁ、春川。お前、気付いたな?」
視界を歪ませる俺に、千都世は今まで以上に優しい声で、俺に言った。
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