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「はぁっ、はぁ…っ!」 千都世に背中を押され、俺は走った。 言う事なんてまとまってないし、そもそも家にいるかもわからないから、会える保証もない。 それでも俺は走って、息を切らしながら琥太郎の家に向かった。 「…っかは、は……っ、はぁ……ッ、」 すっかり日が落ちて、辺りは薄暗くなっている。琥太郎の部屋の電気はついていて、それを見た瞬間、心拍数が一気に上がった。 少し震える指でインターフォンを押すと、しばらくして、ガチャリと扉が開いた。 「はい……って、何しに来た、お前。」 「……きさらぎ…。」 中から出てきたのは如月で、俺を顔を見た瞬間表情がガラッと変わる。そして、当たり前のように出てきた如月に、ずっと琥太郎の側にいてくれてたのかと改めて思った。 「何しに来たと聞いている。」 一段と低い声で言われ、言葉に詰まる。きっと何言っても、こいつは琥太郎に会わせてくれないだろうから。 でも千都世に言われて、自分がすべき事に気が付いた。 「……琥太郎と、話をするために来た。」 「ハッ、散々傷付けといて今更何言ってる?俺が会わせると思うか?帰れ。」 「わかってる。でも今日来たのは、あいつを傷付けるためじゃない。 頼む、少しでいい…頼むから会わせてくれ。」 ペコリと頭を下げた。 こんな事だって、如月相手にした事はない。 だからと言って、如月が簡単に琥太郎と会わせるわけがないけど…。 「目障りだ。さっさと孕ませた女の元に行け。…俺は非常に残念だよ、お前がヤクザに拉致られた方じゃなくて。」 「………。」 自分で蒔いた種が、自分の道を塞ぐ。まさに自分の首を締める状態に、脱出案が浮かばない。 「わかったら、帰…」 「如月ー?誰が来たのー?」 扉を閉められる直前、いつ振りかの愛しい声が如月の背後から聞こえた。

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