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「おっ!おかえり!」 「…ただいま…。」 足元をフラつかせながら歩いていたからか、帰宅するのに時間がかかった。でも千都世は、ちゃんと俺の家で待っていてくれた。 「琥太郎、なんて?」 「…帰れって、会いたくないって言われた。」 戸惑いで揺れた目、強い拒絶の言葉…帰ってくる時間、ずっとそれだけを思い出していた。 「あー…そっか。」 「悪ぃな、折角後押ししてくれたのに、結局伝えられなくて…。」 自分の不甲斐なさに情けないと思いながら、千都世に謝る。ここまでしてくれたのに、結果を残せていない。 「いいよ、それでも。お前が頑張った事には変わりねえからさ。」 「…っわ、」 「なんつー顔してんのよ〜!」 眉毛を八の字にさせる俺の頭を掴んでは、ワシャワシャと髪を乱す千都世。その手はすごく温かくて、琥太郎以外の人の温もりに、何故か目頭が熱くなった。 「ほら、笑え!笑わねえと、福はやって来ねえぞ!!」 「……おもしろくねえのに、笑えねえ。」 「じゃあ泣くか?ん?」 「泣かねえわ、ボケ。」 「ははっ、お前は嘘が下手だな。」 ほんの少し、ほんの少しだけ目尻についた水を、千都世はスッと拭き取って。 「お前がどんな嘘ついても、俺はお前から離れてやらねえからな!覚悟しろ!」 なんて、笑って見せた。 「……馬鹿な奴。」 そんな千都世に、俺はすごく嬉しくなった。

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