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琥太郎と如月に会った日から一ヶ月が過ぎた。 俺はここ最近、千都世の紹介でアルバイトを始めた。 簡単な仕分け作業で、内職もあるため、あまり体調が優れない時は家でやっている。千都世の言う通り、貯金もかなり減っていたし、いつまでも腐っていてはダメだと思ったからだ。 「なぁ、本当にいいんか。」 「しつこい。」 「だってよぉ…。」 「これは俺が決める事だろ。俺がいいって言ってんだから、いいんだよ。」 家で内職中、遊びに来た千都世がテーブルに項垂れながら不服そうな顔をする。 「琥太郎には、もう会わねえ。だから、俺が死ぬことも言わない。」 まぁ、そんな顔をさせてるのは俺なんだけど。 「お前、変な意地になってるなら…」 「違えよ、そんなんじゃない。ちゃんと向き合って、考えて、出した答え。」 …二週間程前、琥太郎を見かけた。 体調が良かったから、買い物行こうと外出した時だった。琥太郎の隣には、相変わらず如月がいて、手を繋いで、笑いながら歩いていた。 「やっと、ちゃんと笑えるようになってきた琥太郎に、もう辛い思いをさせたくない。」 きっと俺の顔を見れば思い出す。悪い噂も、傷付いた言葉も。 「それに、もう如月がいるからさ。」 俺を好きだった琥太郎は、もういない。 二人で掴んだ幸せを、俺の手で壊したくない。 だから…。 「千都世に、頼みがある。」

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