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「俺が死んだ後、もし、琥太郎がお前の所に来たら…、これを渡してほしい。」 そう言って差し出したのは白い封筒。 「なにこれ…、手紙?」 「そう。別に遺書ってわけじゃねえけど、死んだら説明もできないからな。」 「…それを遺書って言うんだよ…。」 千都世は半分呆れながらも、それを受け取り、「ふーん…」と興味なさげに鞄へしまった。 「まぁ、あんな態度取られてるし、多分来ないと思うけど…万が一のためにな。」 少し困ったように笑うと、千都世は「はいはい」と聞き流す。 本当にこいつは、そういう話題が苦手な奴だ。 「千都世。」 「あー?んだよ、はよ手ェ動かせ。」 ムスッとしながら内職を手伝ってくれてる千都世は、俺の目を見ようとしない。 「ありがとな、マジで…色々。」 「………。」 俺がそう言うと、千都世の手がピクリと反応した後、動きを止めた。 「俺、お前がいてくれて本当によかったわ。」 「……やめろよ、マジで、そういうの。」 「お前、全然俺から離れねえし、見捨てねえし…ハハッ、俺専用のドM野郎だな。」 「……だよ、」 「ん?」 「っそーだよ!!俺は!お前専用のドM野郎だよ!!」 小声だった千都世が、急に声を張り上げながら、やっと俺の目を見る。千都世の瞳の中には俺がいて、自分の存在がまだここにあるんだと、生きてるんだと実感が湧いた。 「これで満足か!このサディスト!!」 「アハハッ、喜べ!お前専用だよっ!」 「嬉しかねえよ!この……っ、」 「ん?」 「っなんでもねえわ!てかさっさと仕事しろやボケナスが!」 「えー怖…、つか急に口悪……。」 プリプリ怒る千都世を横目に、途中だった作業に手を付けた。

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