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「な、なんで……っ、おまえ…!」
驚きと戸惑いで、まともなセリフが出てこない。というか、未だ現状を処理できていない。
なんで俺は、自分ちの玄関の天井を見上げている?そんで、なんで教えてないのに琥太郎がここにいる…?
…なんで俺の事、抱きしめてんの……。
「……帰れ。」
だんだん現実が見えてきて、俺はポツリと呟いた。ビクッと肩を揺らす琥太郎を、そっと俺から引き離す。
「頼むから……、帰って…。」
…千都世だ。
全部千都世が言ったんだ…琥太郎に。
俺が決めたって言ったのに。
俺が向き合って考えて出した答えって、言ったのに…。
「はる…」
「こんな俺…、見んじゃねえ…!」
今日に限って、こんな姿……琥太郎に見せられたもんじゃねえよ。
「…如月が怒るぞ、帰れよ……新橋…。」
琥太郎から距離を取りながら、体を隠すように小さく座り込み、顔も見られないように手で覆いながら俯く。
如月の名前を口にして、前に言われたことを思い出し、呼び慣れない名字で琥太郎を呼んだ。
「…千都世だろ?何言われたか知らねえけど、とりあえず、今日は帰っ……ッんぅ!」
不意に、視界が少しだけ明るくなったと思ったら再び暗くなって、唇に懐かしい感触がした。
「…んっ、ふ……っ、」
チュッチュッと繰り返されるキスに抵抗しようとするが、あまり力が入らず、されるがままになる。琥太郎よりも力が弱くなった自分に嫌気がさしたが、本当に体調のせいなのか?と、甘いジャッジを自分自身がしてるんじゃないか?と、否定できない可能性が脳裏をよぎった。
「…んぅ、…っゃ、めろ…っ!」
俺は力を振り絞り、顔を横に背け、夢見たいなキスを終わらせた。
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