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「…俺があいつの病気の事を知ったのは、琥太郎と別れてすぐの事だった。知った経由は本当に偶然だったけど…。ドジなナースがいなかったら、俺もはぐらかされて終わってたよ。」
あの時俺に、鼻炎の薬をもらいに来たって言おうとしていた。あのナースがいたから、あいつは観念して打ち明けざるを得なかったんだ。
「それから間もなく、春川が合コンに顔出すようになった。けど毎日、俺んちの便所の前で座り込んでたよ。ッハハ、女の香水がダメとか合コン行くなっつーね…本当、情けねえやつ。」
病気の事バレてんのに、悪い噂の意図も教えてくれなかった。…それは、さすがにちょっと傷付いたけど。
「悪い噂も全部、あいつがワザと立てたものだ。けどそれを、"琥太郎のため"とか言うつもりはないし、事実、春川自身のためだった。」
一人で全部背負うには重すぎる現実。それでも戦おうとしたんだ。…たった一人で。
「逃げたんだよ、あいつは。…琥太郎から。」
その一番の理由は、愛する人のため。
「春川は、『自分が死んだ後、琥太郎がしぬほど泣くのが怖い』って言ってた。」
「え……?」
「まぁ…、やっぱり一人で決めつけるのは良くねえとは思う。けど、あれだけの現実を突き付けられた時は一人だったんだ。たくさん考えて、悩んで、悩んで…出した結論だったんだろうよ。」
間違いだとわかっていても、それを選んでしまった。だけど、間違いの正し方にあいつは気が付いた。
「でも、その結論は誰も幸せにならねえから…俺は、琥太郎に会って本当のことを伝えるように言ったんだ。」
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