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「春川の場所っ、教えてほしいんだけどっ!」 琥太郎が俺の所に来たのは、思ったよりも早かった。…まぁ、来る事は分かっていた。 だって琥太郎はまだ、春川に恋してるもんな。 「フッ、ほらよ。…後は任せたぜ、琥太郎。」 住所と地図が書かれたメモを琥太郎に渡す。 琥太郎は少しムスッとしながらも、俺の手をギュッと握った。 「…恋人だった俺が知らないで、時雨が知ってるの、本当はすごく悔しい…。でも、今まで春川のそばにいてくれて、感謝してる。」 「…ああ。」 「あいつを、俺の分まで信じて、見放さないでくれて…っ、ありがとう…っ!」 …可愛いやつ。だから、余計に恨めねえ。 「今度はお前が、春川のそばにいてやって。」 「うん…っ!!」 琥太郎の流れた涙は、太陽の光で反射して、キラキラと輝いていた。 その涙を拭いてやるのは、春川…お前だよ。 背を向け、走っていく琥太郎の背中をずっと眺めていた。見えなくなるまで、ずっと、ずっと……。 「千都世、お前は俺の事信じてないんだ。」 「いや、そういうわけじゃ…」 「だって琥太郎に言っただろ。俺は、お前の事信じてたのに。」 後日、案の定不機嫌な顔をした春川に問い詰められた。でもそれは、一瞬で終わり…。 「……ッハハ、でも、ありがとな!琥太郎に、全部伝えてくれて…。」 春川は、幸せそうに笑ったんだ。 見たかった春川の姿に、また俺は泣きそうになった。

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