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時雨がなんていうのか、何故かドキドキした。 「好きってか愛してんよ〜、もちろん今も。」 「え…っ、」 「大切で、大事な親友だからな。」 「あ、ああ……、そっか…。」 ニッと笑いながら、店員が持ってきたビールを受け取る。その言葉を聞いて、どこかホッとした自分がいた事に、俺は気付いていなかった。 「今日はありがとな!んじゃ、また連絡するわ!気を付けて帰れよー。」 「んー、じゃーな。」 「……っと、いけね、忘れてた!」 「?」 ヒラヒラと手を振りながら歩く時雨を少し見送り、自分も帰ろうとした時、時雨が何かを思い出して急いで戻ってきた。 「そうそう、これ、お前に渡したかったんだわ。」 「え…、なにこれ、手紙…?」 差し出されたのは、色褪せた封筒に入った手紙。受け取って裏面を見た俺は、思わず目を見開いた。 「はる、かわ…?」 だってそこには、懐かしい字体で"春川 透"と書かれていたから。 「…捨てとけって言われたんだけど、やっぱ俺には出来なくてさ…、ずっと持ってたんだ。渡すの、遅くなってゴメンな。」 「や……、ありがとう……。」 「あっ、中は見てねえからな!?」 「わかってるよ…。」 春川からの手紙をジッと見つめる。その姿に、時雨はフッと笑って、俺の頭をくしゃりと撫でた。 「読むのは、お前の好きなタイミングで読め。春川がお前に残した、最後の手紙だ。」 「…うん。」 「それ読んで、春川が大好きだった頃のお前に戻れるといいな。」 「え…?」 「じゃあな、気を付けて帰れよ。」 時雨はどこか切なそうに微笑んだ後、俺に背を向け歩いていく。俺も俺で、心臓を煩くさせながら足早に帰った。 「ただいま…。」 家に着き、誰もいない部屋に向かって挨拶をして、スーツも脱がずに鞄から手紙を出す。 「…春川が大好きだった、俺…。」 数年の時を経て、春川の手紙は俺に届いた。 俺は、手を小さく震わせながら、静かに封を開ける。

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