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Memory:43千都世 of Love 2
琥太郎に手紙を渡してから数ヶ月が経った。
今日も仕事終わりに飲みに行こうと、いつもの居酒屋へ向かう。
「時雨ー!こっち!」
「おお、またせたな。」
「遅いよぉ!」
「わりわり、部下のミス処理手伝ってた。」
少し遅れてしまった俺に頬を膨らませながら、注文しといてくれたビールを俺にくれた。
「んじゃ、乾杯!」
「カンパーイ!おつかれー!」
キンッとガラスを合わせ、グビグビと飲み干す。疲れた体に染みるビールが最高に美味い。
「仕事、忙しかったー?」
「んー、まぁ…、尻拭いが大変だな。」
「そっかぁ。でも時雨は面倒見がいいから、部下からも慕われそうだね。」
ヘラッと笑い、焼き鳥を頬張る琥太郎。
今日はヤケに機嫌がいい。
「…なんか、嬉しいことでもあったのか?」
ポンポンと頭を撫でながら聞くと、琥太郎は一瞬フリーズしてから、次第に顔を赤くさせる。
「べっ、別に……っ、なんも、ねえけどっ?」
「ハハッ、なんだそりゃ。」
"なにもない"と言いながら動揺する琥太郎が可笑しくて、絶対嬉しいことがあったと確信しながら笑った。
最近の琥太郎は本当に明るくなったと思う。ふとした瞬間、昔を思い出させるくらい、よく笑うようになった。
春川の手紙を渡してからだから、きっとそのお陰なんだろう。
「あ、あのさ……、」
「んー?」
手紙の内容がわからなかっただけに、落ち込む琥太郎に渡していいかわからなくて躊躇ってたけど、はやく渡してやればよかった…と、少し後悔。
春川、お前はどんな時でも琥太郎を元気にさせる事ができるな。
「時雨のこと、ちっ、千都世…って、呼んで、いい…?」
「…え?」
しみじみ春川の存在は凄いなと思っていたら、琥太郎が何やら上目遣いで言ってきた。
「あっ、嫌なら全然…!ほら、こんだけ飲みに行ってんのに名字で呼ぶのもなーって!ただそれだけだから!」
「ブハッ!アッハハハ!」
「っな、なんだよぉ…!」
琥太郎の恥ずかしそうに慌てる姿が、妙に愛しくて堪らず笑い出す。
そりゃ、春川も如月も好きになるわな。
「いいよ、好きに呼べよ。」
「じゃ、じゃあ…千都世…。」
「おう!」
名前を呼ばれ、にひっと笑うと、琥太郎は更に顔を赤くした。
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