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第266話
お兄さんの秘密 21
全員が盗聴器から聞こえてくる臨場感たっぷりのあの場面に固まる中、彼女だけは目を爛々と輝かせてなにやら一生懸命スマフォに書き込んでいる。何をしてるんだろう?
俺がじっと見つめているのを感じると、ニコリとしてスマホの画面から指を離した。
隣の部屋は濡場が終わったのか、片方の男の声はしなくなった。バタンとドアの鳴る音がして聞こえてきたから部屋から出たのだろう。
その後は王国と兄、恍紀の会話になり、どうやら恍紀はまだ残るようだということがわかった。完全に同意の上の行為なんだろうな……
盗聴でわかったのはそんな事実。
遠くでシャワーの音が聞こえ出すと、誰かがため息を長く吐いた。団さんだった。
ベランダから物音がして王国君が帰ってきた。呆然としたような雰囲気の僕らを見て気まずそうにすると、横に居た杏果が泣き声を出しながらその胸に飛び込んでいった。
そういえばなんで杏果はワンピースなんて着てるんだ?
「 杏果、なんでワンピースなんて 」
「 だって、隣の部屋が心配で、僕も探りに行こうかなと思って……
女の人の方が入れてもらえるのかなって 」
「 バカ!何考えてんだよ!隣は普通の奴らじゃないんだよ!」
「 普通の奴らじゃないって?」
「 さっきの男が鞭かどうのと言ってたの聞きました?」
慌てて録音していた先ほどの会話を聞いてみると、
「 確かに鞭振りながらって言ってるな 」
「 それに兄貴の格好。ボンデージ姿だった 」
「 ボンデージ!って、SMの時の格好か?」
「 多分。鞭降るってことは兄貴がそっち側ってことでしょ 」
安藤君が苦しそうに僕の手を握り締めながら話を続ける。
「 団さんが追ってるのって何?」
一息吐くとそれまで黙っていた団さんが重い口を開いた。
「 恍紀が呼び出されてる相手は前俺が書いた記事の男だ。あいつは最近ほとぼり冷めたと思ったのか又動き出してる。未成年の子たちを使って売春させてる組織と繋がっているはずなんだ。もしかしたら隣でショーもやってるのかもしれない。あいつは顧客を紹介するパイプもあるし、まとわりついてる奴らが離さないんだろう 」
「 そんな、兄貴が未成年相手に鞭振るったって!そんなことあるわけない!」
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