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第269話

お兄さんの秘密 24 俺の弟だと言った声に振り返るとその声をかけてきたのは団さんだった。 団さんと言いかけて、弟と言われた事を思い出した。 俺が弟だと警官に言ったわけだよな。 「 弟?さん?」 警官の怪しむ問いに、 「 ええ、歳は離れてますがね 」 と言いながら俺の前に庇うように立つ。 その時、駐車場の前の路上近くが野次馬でうるさくなった。 兎に角入らないでと、言いながら警官たちは駐車場に降りるスロープを出入り口の方に歩いて行った。 「 団さん、兄貴は?」 「 洸紀は、わからないが、 少なくとも署には行かなくちゃならないだろう。 違う黒塗りの車に子どもが乗せられてたからな 」 「 え?子ども?」 「 ああ、子どもだ、それも中学生くらいの 」 酷く深刻な事態に皆押し黙った。 佐賀さんがこちらに気がついて寄ってくる。 「 よお、王国じゃないか。なんでここに?」 「 佐賀さん…俺は、 兄貴を探してたんです。ここはスマフォで居場所がわかって 」 佐賀さんは白髪の混じった頭を軽く掻くと、 「 そうか。 オヤジさんに心配するな、って伝言したいところだが、今回は難しいかもしれない。洸紀にも署で事情聴衆はするから多分今晩は帰れない。そのことは伝えておいてくれ 」 そう言うなり踵を返すと、何人かの警官に指示を出しながら佐賀さんも地下の出入り口を昇って行ってしまった。 和也さんが団さんに助っ人の人は?と尋ねると、 「 ああ、警官が来たから身を隠してるよ……カメラ取り上げられたらやばいからな 」 「 てことはカメラは、写真は撮れたんですか?」 「 うん、撮れたって言ってたな。今から確認するけどあいつが撮れたって言ってたら撮れてるから 」 「 それって証拠になるの?」 とせいて俺が聞くと、 「 こんな夜中に、未成年者を同乗させてるところを現行で見られてるんだからそれだけでアウトだろう 」 と団さんが苦々しく答える。 「 兄貴と一緒だった男は?」 「 洸紀はあいつと一緒には出て来たが車には乗らなかったらしい。あの議員の車には子どもは乗ってなかったが、このビルの一緒の場所に誰が誰といたかってことにはなるだろうな。洸紀が例え子どもが一緒だったと知らなかったとしてもそれを証明するのが難しい 」 「 オヤジ、心配してるだろうな……」

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