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第271話
お兄さんの秘密 26
杏果は濡れた目を擦りながら片手でしっかり握った俺の手は離さない。
「 ごめんな、巻き込んで……」
俯いている顔を上げさせて、瞼から鼻の頭に、そして唇にキスをすると、
「 おうこ……」
と小さく呟きながら抱きついてくる。
「 こんな時に名前呼び?」
おかしくて嬉しくてトントンと背中を叩くと、
「 だって、みんなおうこって呼んでる。ずるい 」
拗ねたように答える目元がほんのり淡い桜色に染まる。
タマンねぇなと深呼吸を一つする。
やらなきゃならないことがあるから、この恋人を前にしてお預けは辛いけど仕方がない。
「 もう少し待てる?」
不思議そうな顔をしてる杏果に俺の先走って硬く膨らむ雄をジーパンの布越しに押し付ける。
するとその桜色が真っ赤になった。
「 う、うん 」
「 くそ、本当に兄貴には10倍返ししてもらわないとあわねぇな 」
「 おうこ、洸紀さんにくそなんて言っちゃダメ 」
赤くなったまま名前を呼んで少し怒るその顔に、俺の雄はますます傘が張ってきて、痛いほどだよ。
杏果を連れて部屋に上がると、あの日 を思い出しながら団さんの預かり物を探す。ベッドのマットレスの間からそれを見つけて封筒を開けてみると、中にはディスクが三枚入っていた。
急いでパソコンを立ち上げてドライブに入れたけど嫌な予感でなかなかスタートのクリックができない。
それでも見なきゃならない……
意を決してクリックすると、真っ黒な画面からつんざくような嬌声が上がった。
な、なに!?
徐々に明るくなってくる画面の中央には目をマスクで覆った黒いボンデージ姿の人間と、天井からの鎖に吊られた全裸の男がいる。
嬌声は周りから?
その男の口にはしっかりさるぐつわがしてあるからこの嬌声は、周りに人がいるの?
ボンデージ姿の人間には覚えがある……さっき見た兄貴と瓜二つの背格好。
やっぱり預かったものは兄貴の関係してるものだった?
隣の杏果は呆然とその画面を見ている。
マスクの男は吊るされた男の背中を鞭で打ち据えている。苦しそうに身体を捻って避けようとする男にかける声が聞こえてきた。
「 動くな、動くとかえって痛い思いをする 」
「 え?洸紀さん?この声、洸紀さん 」
俺のみならず杏果もその声で気がついた。
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