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第275話
お兄さんの秘密 30
「 聞いたわよ、パパが連絡してきたもの。トラ箱にいるんでしょ?あ、ブタ箱か 」
オヤジよりはよほど豪胆だと思ってはいたけど、これには俺もびっくりした。息子捕まってるんですけど……
びっくり顔をしていた俺の頰を軽く叩きながら、
「 あんたこそ、誰連れ込んでるのよ、こんな洸紀が大変な時に 」
あ、あえっと……
「 まぁ、いいけど、下の事情は若いから仕方なしだけど、
あの声は女の子じゃないわね 」
今度こそ俺は盛大に真っ赤になった。
「 なん、なんで 」
その時、偶然にありがたくも階下の玄関の扉が開く音がした。
助かった、オヤジと姉貴が上がって来たんだ。
「 あ、パパ帰ってきたのかな。
王国、
後でお相手の人は起こされた私に挨拶はしてくれるんでしょうね 」
おふくろはドスの効いた一言を告げると、
「 お帰り〜〜お疲れ様〜〜」
と同じ人とは思えないさわやかな声を出して階段を降りていった。
挨拶……杏果におふくろに挨拶させるの?
俺は頭を抱えたくなった。絶対に餌食にされる。
オヤジ以上に綺麗なものが好きなおふくろは、今回だって気に入ってたリストランテのソムリエが関西で店を出したからって一週間も追っかけ行ってたくらいだ。
多分杏果の貌見たら狂喜乱舞して俺から隔離すること間違いない。
どうしよう、おふくろは店に顔を出さないから杏果がバイトしていても大丈夫だと思ってたけど、今回は本当にやばいかもしれない。
ちょっと待てよ。
今日はそんな事より兄貴のことで大騒ぎなはず。
おふくろの気がそれるのを願う俺は、この卑怯な気持ちに、兄貴にゴメンと心の中で謝った。
階下が急に賑やかになった。この隙に杏果を家から出そうか?と考えていたら、後ろから俺を呼ぶ杏果の潜めた声が聞こえて来た。
「 王国、王国、大丈夫?お母さんだったの?」
この事件で俺を名前呼びするようになった杏果の可愛い声にニンマリしながら振り向くと、しっかりと服を着込んだ杏果が不安そうな顔で立っていた。
なんだ服を着ちゃったか。
少し残念な俺は再度押し倒したくなる衝動に襲われる。
やりたい盛りなんだよな、まだまだ足りない。
杏果の手を掴むとさっきまで帰そうかなと考えてた気持ちはどっかに吹き飛んだ。
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