278 / 325
第278話
お兄さんの秘密 33
次の朝、起きるともうオヤジとオフクロは警察に行った後だった。
いつもよりもっと口数の少ない姉貴にどこの署?と聞くと、
「 あぁ、佐賀さんに電話して確かめていたから、渋谷署よ 」
「 どのくらい前に?」
「 うーん、1時間前かな 」
「 今日店はどうするの?」
「 休むわ、でも出前はやるってコウさん言ってるから、私は出るけど 」
そうか、と言いながら寝る前に見た映像を思い出す。
あのこと団さんに聞かなきゃなんないな、
飯食ったら連絡してみよう。
兄貴に作ったおにぎりが多めに作って置いてあった。オフクロが握ったおにぎり、久しぶりだ。二回続けてのおにぎり、それを杏果と二人で頬張りながら味噌汁を飲むと、兄貴が連れていかれたことが夢みたいに思えた。
考えもしなかった事がこの2日間で起こってるんだ。
姉貴が店に行くと、食卓の上を片付けてくれていた杏果をつれて部屋に戻る。
「 この画像のこと、団さんに連絡してみるよ。どうすればいいのかわからないし、このままじゃ ……」
話が続かない俺の頰に杏果の手が優しく触れる。見つめあってキスを交わすと、俺は団さんに連絡をした。
しばらくコール音が続く、我慢して待っているとようやく団さんの声がした。
「 もしもし、おう、王国か 」
「 うん、そう……」
「 元気ねえなぁ、ちゃんと休んだのか?
オヤジさんオフクロさんは渋谷署に来てるんだな?」
「 え?団さんも警察に ?」
「 あぁ、心配でな、
それとちょっと待って、今署内だから外に出る。かけ直すから 」
通話は切れた。
団さん、警察にいるらしい
と杏果に告げると、杏果も
「 今和也さんから、ライン入った」
「 なんて?」
「 渋谷署だと思うから向かってるって 」
そう話してる間に団さんから連絡が入った。
「 王国か、今あいつ、議員は出てきたぞ 」
「 え?兄貴は?」
「 わからねぇ。
黒塗りの車が入ってきたから、知り合いに確かめたら、あいつの方は帰るらしい 」
団さんが誰かと声高に喋ってる声が聞こえる。
逮捕、現行犯?聴衆されてる
ものものしい単語が途切れ途切れに聞こえてくる。
スマフォを耳に押し付けている手の震えが止まらない。
あっ!出てきたぞ!
という声が聞こえた。
「 団さん!誰が?
兄貴じゃないの? 」
ともだちにシェアしよう!