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第279話
お兄さんの秘密 34
暫く人の怒声と機材のぶつかる音、警官の制止する声が響いた途端、通話が切れた。
「 行こう!俺行くから 」
居ても立っても居られないいられない、俺は預かったDVDの袋を掴むと杏果と二人で家を飛び出した。
走っていけば5分で着く近さ。
息を切らせて近づくと署の前は大変な騒ぎになっていた。
カメラとマイクとなんかわけわからない人の集団、間に警察官の制服が混じる。
なかなか近づけないのに業を煮やして俺はオヤジに連絡した。
繋がった途端聞こえてくるのんびりした声に、
「 オヤジ、どこにいんの?」
と大声で怒鳴ると、
「 おいおい、耳が痛いよ~
何どうした? 」
「 渋谷署の前まで来てるんだ!凄い取材陣で入れないみたいなんだよ 」
「 あー、そうだなぁ。
多分タレントの◯川とか、IT企業の有名な社長、ほれ、◯谷さんとか今でてったからじゃないか 」
「 え?そんな有名人もいたの?」
「 そうらしい、なんか凄い賑やかだぞ、この署は 」
あまりのノーテンキぶりに呆れるのを通り越した。
「 それで、兄貴は?兄貴はどうなったんだよ 」
「 うん、弁護士の人がさっき面会した 」
「 弁護士?頼んだの?」
「 いや……それがさ、
俺もわかんないんだけど、あ、母さんもなんだ 」
はっきりしないなぁ……
「 兎に角会えない?どっかから中に入れないの?」
「 うんちょっと知り合いに聞いてみるから、待って 」
切れたスマフォを持ったままイライラしながら待ってる俺。隣に寄り添う杏果も呆然と警察の入り口付近の喧騒を見ている。
その時
「 おい 」
と肩を叩かれた。
振り向くと和也さんがやはり息を切らして立っていた。
どうしたんだ?この騒ぎ
なんか有名人も一緒に連れていかれてたみたいで、そのせいらしい
思ったより大掛かりなことになってるんだな
と眉を顰める和也さん。杏果の頭を撫でると、
「 顔色悪いけど、夕べは休めたのか?」
ギクッとした俺……杏果も真っ赤になっている。
「 あー、うんっ、大丈夫 」
本当か?というように俺を睨む和也さん。
その時背後からもう一人声をかけてくる人がいた。
「 どうしたんだよ!みんな揃っちゃって 」
背後をもう一回見ると、和也さんの後ろに嶺さんと流星の姿があった。
なんで?
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