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第281話

お兄さんの秘密 36 こちらに気がついた佐賀さんが手招いた。 「 おう、こっちだ。でも入るのは王国だけにしてくれ 」 俺の後をついてきた嶺さんが、 「 すみません、私は身元引き受け人で呼ばれてるんですが 」 と伝えると、 「 じゃあ、貴方と王国と二人 」 と告げて入っていくのを俺は杏果に和也さんと待っててと伝えて慌てて後を付いて入った。 騒然としていた一階のロビーから奥に入ると外の喧騒が嘘のように重い雰囲気が漂っている。 「 免許の書き換えとか可愛い用事で来たわけじゃないから緊張しちゃうな 」 とちっとも緊張なんかしてない声で嶺さんが喋るのがなんだか心強い。 さっきまではなんて軽薄な人だと思ってたけど案外頼りがいある人なのか? 廊下の曲がった先の部屋に案内されるとそこにはオヤジとオフクロが座っていた。 「 よお 」 とオヤジは珍しく仏頂面を隠そうともしていない。 「 兄貴は?」 「 未だだ。相澤は今帰ったってのに 」 相澤京司、国会議員で今は文部科学省の副大臣をしてる、兄貴があの時ベッドの上でキョウジさんと言ったその名前の主だ。 嶺さんは俺たちに軽く頭を下げると外に立っていた警察官に何か喋り掛けるとそのまま部屋を出て行ってしまった。 「 あの人は?」 「 うん、一緒に捕まった未成年の身元引受けだって、芸能プロの社長さんらしい 」 「 未成年がいたの?」 「 そうらしい 」 一気にオフクロの口調も暗くなる。 手持ち無沙汰でどんよりと濁った空気の中、嶺さんが再び部屋に戻ってきた。 「 今手続き取ってきたから俺のは連れて帰れそうだけど 」 「 他にも未成年は居たんですか?」 「 あー、多分な 」 口ごもった嶺さんの後ろから刑事みたいな男が入ってきた。 「 安藤洪紀さんの身元引受け者は…… 」 「 私です 」 とすごい勢いで立ち上がるオヤジとオフクロ。 「 来てください、こちらに 」 嶺さんに良かったな、と軽く肩を叩かれて、3人で元の廊下を戻った。 兄貴がいた。何も持たずに下を向いてソファに一人座っている。そのそばに立っていたのは佐賀さんで、店に来るいつもの佐賀さんとは全く違う顔をしていた。 駆け寄ったオフクロが兄貴を抱きしめる。何も言わずにポンポンと頭を叩くオヤジ。俺の目には思わず涙が滲んだ。

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