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第288話

お兄さんの秘密 43 (杏果 ) タクシーで帰ってきた三人。 どうしよう、行って良いものかどうか和也さんと二人で顔を見合わせていると、僕らに気づいた王国がカフェの中に入ってきた。 荒い息を深呼吸で収めると僕の横にどっかりと座る。 「 ごめんな、みんなに迷惑かけて 」 「 僕らのことより、オヤジさんとオフクロさんは?大丈夫なのか?」 「 うん、あの人たちは並の人生渡ってきたわけじゃないから、案外達観してるよ。それより 」 「 それより?」 「 兄貴が、何考えてんのか、わからない……黙ったまま、それも強情でじゃなく、何か変なんだよ。近寄れないって言うか、気持ちが届かないって言うか。それが本当に、 イヤダ 」 最後に小さく足した王国のイヤダ。 「 泣くなよ、杏果 」 と言われて僕は自分が涙をこぼしたのを知った。 頭を撫でながら僕の涙を指で掬うと、 「 杏果くらいわかりやすいとさ、楽なんだけど ……大丈夫だからって、俺が見つかるとまずいから早く出ろって言った、あの時の兄貴は俺の知ってる兄貴だったんだ 、だけど 」 「 だけど?」 「 警察で会った兄貴は、別人だった…… 和也さん、俺たち団さんから預かったあの当時兄貴がいなくなっていた間の映像を見たんです。和也さんはあの時の兄貴を知ってるんでしょ?どんなやつだったんですか?」 王国の手は震えてる。 「 どんな?いい子だったよ…… 俺のことを助けようとして金を都合つけてくれた。100万もの金。いつも優しくて人のことばっかり先に考えるような子だったよ 」 「 100万……そんな金どっから 」 「 俺と一緒にゲイビデオの撮影してた最初の頃は脅されてやってた、でもその仕事自体はそんなに酷い仕事でもなかったんだ。摘発受けてからは俺はうまく足を洗えたけど、コウは帰ってこなかったんだろ? なんであの時、コウと一緒に行動しなかったかと本当に後悔してる。一緒に連れ出せば良かったのに、結局うまいことやったのは俺だけだ」 「 昨日のあいつとはどこで知り合ったか知ってますか?」 「 知ってるよ、俺たちが金持ちの相手の仕事をしてる時に、あの人は斡旋みたいなことをしてた。彼のツテで回って来る客も多かった 」 「 お客って?」 「 俺たちの仕事はゲイビデオだけってわけでもなかったんだよ 」

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