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第290話

お兄さんの秘密 45 (杏果 ) 「 どこまでマスコミが報道できるかだな、ものが大きすぎる。もう早速圧力がかかったらしい。 今の政権は人事握ってるから、どうなるかはマスコミ側の胆力だな 」 「 なら、あの画像はどうなる? 兄貴が映ってるのにあれが出るの?」 王国の声が震えてる。 黙った団さんが王国を見つめる。 「 あの洸紀は未成年か? そうなら多分個人情報は隠されるだろうが、今回の件は恐らく未成年売春の組織がターゲットになるだろうからな 、そんなことに現職の国会議員それも三世の文科副大臣が関わるなんてことになったら政権は持たない。 あっちも必死だろうな 」 あまりにも重い話に誰も次の言葉が出なかった。 団さんが一つため息をつくと、 「 帰ってるだろ?恍紀は、少し話を聞いていくか 」 と立ち上がる。 頷いた王国は僕の手を一回強く握って、トレーに乗ったみんなの飲み物を後片付けに行く。 和也さんは、迷ったような顔を見せたけど一緒に来るようだった。 カフェを出て通りを渡り家への階段を上がる。 お店は暖簾は出てないけど出前だけはやっているのか厨房には煌煌と電気がついて換気扇が唸る音が聞こえた。 王国は玄関を開けてみんなに入るように促す。 奥の居間からテレビの音だけが聞こえてくる。居間の扉を開けると、テレビの音だけが響く部屋には恍紀さんしかいなかった。 「 親父とオフクロは?」 その声にゆっくりと振り向いた顔は少し浮腫んでいてはっきりと涙の跡があった。 「 ごめん、わからない。帰ってきて、俺がここ座ると二人ともいなかった 」 「 あっ 」 と言った王国がすぐに電話をかける。 「 姉貴、二人ともそこ? わかった、ちょっとオヤジに変わって 」 暫く頷きながら話した後。 今日一番の笑顔になった王国。 「 裁判勝つのにいくらかかるかわかんないから、今から店も開けるって、 親父とオフクロ気合い入ったらしい、ガンガン稼ぐって!」 団さんがニンマリと笑う。 「 親父さんとオフクロさんらしいな、逞しく市井で生きるってやつだ 」 恍紀さんは目を見張ると、その眦からまた涙が溢れた。 暫く声もなく蹲る恍紀さんをみんなで見つめていた。

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