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第292話
お兄さんの秘密 47 (杏果 )
「ダメだ、今回は又未成年が関わってる。俺に出さないという選択はない 」
「 王国持ってきてくれ、俺はそれを受け取ったら失礼するよ 」
団さんは自分の部屋から封筒を持ってきた王国からそれを受け取ると、
恍紀さんを見つめて何か言いかけたけど何も言わずに出て行った。
「 コウ……」
「 みんな出て行ってくれよ……出て行って 」
恍紀さんはそう呟くと奥の部屋に入ってしまった。
「 すみません、和也さん。
どうなるんだろう……これから 」
王国の言う通り、
誰もこの先のことはわからない。重く苦しく始まった日がやっと夜になろうとしていた。
小次郎は夜から通常の時間まで店を開けた。お客さんたちが沢山来てくれて店がいつもの賑わいを取り戻すとみんな一様に笑顔になる。
僕も店を最後まで手伝ってからうちへ帰った。
流石に送っていくっと言ってきた王国は強く断って二日ぶりに帰ると、
「 もっと早く連絡しなさいよ、心配するでしょうが 」
と呆れながら言う姉貴のいつもの姿にホッと安心をした。ヒロシさんも、
「 あ、帰ってきた!お疲れさん、お風呂沸いてる 」
と僕の顔を見るなり労わりの言葉をかけてくれる。
大丈夫、ここに日常はちゃんとある。
翌朝一番で新聞とテレビのニュースをチェックしたけど、あれだけの騒ぎだったのに至極簡単にデートクラブのガサ入れ程度に流されている。
政治家とか著名人の名前は一切出ない。
バイトに行く前の昼のニュースでもやっぱり扱いは小さくて、逮捕されたという顔写真はあの晩は見もしなかった男たちだった。
小次郎に来ても、昨日の話は誰の口にのぼることもなくただ恍紀さんだけがお店にはいなかった。その分王国のお母さんがバリバリ接客していて、なんかお店の注文の勢いはいつもの二倍はありそう。
「 オフクロ、気合い入り過ぎ……もう店はいいからどっか遊びにいかねぇかな 」
と王国はくたびれたように溜息ついている。
昼のピークが過ぎて少し落ち着いた店。
テレビが緊急ニュースを流した。
ピロリン〜という異質な音に厨房もホールに居た僕たちもテレビに目を向けると、
テロップで、
文科省副大臣の辞任と
その相澤京司氏が衆議院議員を自ら辞める事を流していた。
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