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第294話

お兄さんの秘密 49 (杏果 ) そして、その重苦しい空間を破ったのはお父さんだった。 「 恍紀、いいから、座れ。 人払いする必要なんてないだろ?ここにいるのは殆ど家族と家族のようなもんばっかだ。 言いたいこと伝えたいことがあるならここでみんなの前で言えばいい。 みんなお前のことを真剣に心配してる人ばかりだからな 」 お父さんがはっきりとした口調はまるで恍紀さんが何を話すのか知っているような雰囲気だった。 「 まぁ、少なくとも俺に出てくれとは言ってない。俺はここでしっかりと話を聞くぞ 」 団さんがそう引き取ると、 お母さんや王国、京子さんも頷いていた。 一つ深く息を吸って恍紀さんが話し始めた。 「 俺、この店を辞める。辞めさせてください 」 ガタン、とその時にお母さんが力が抜けたようにカウンターの椅子に腰を下ろした。 「 ごめん、本当にごめんなさい。 俺には、これしかないんだ 」 店は又重苦しい静寂に包まれる。 「 何をするんだ?この先自分の身の振り方考えてんのか? お前はまだ警察に事情聞きたいから所在を動かすなって言われてる身だぞ 」 「 わかってる、しばらくはここに置いてもらいたい。それに店もすぐ辞める事はしない。だれか俺の後を……」 「 都合のいい話ね、あの人に付いて来いとでも言われた?」 お母さんのこの一言に場は凍りついた。 「 向こうから連絡あったのね 」 お母さんの問いに答える恍紀さんの声は震えている。 「 ごめん……本当にごめんなさい 」 「 ほとぼりが冷めるのに3ヶ月くらいか……」 団さんが悔しそうに続けた。 「 告訴は免れるって保証付でな。 あらかた検察の方とはもう手が売ってあるんだな。野党とも話がついたんだろう。近々総選挙にもなるっていう情報も流れてる。後何人か目立つ立場のやつのクビは切られるんだろうが、今回の政権側からの圧力は酷かったよ。なんせ全然スクープ扱いにもしない。殆ど門前払いの状態だからな。写真週刊誌やタブロイドまで沈黙しやがった…… 未成年売買春の罪は全部デートクラブの奴らに取らせるらしい。俺ももう一踏ん張りしてみるが 」 団さんが恍紀さんを真っ直ぐに見据える。 「 本当に未成年の存在は、17以下がいたのを お前は知らなかったのか?」

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