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第296話

お兄さんの秘密 51 (杏果 ) サンドラさんにラインするとすぐ返事がきた。仕事で結構近くにいるからそこまで来れるか?と地図が添付されている。 驚いたことにその場所は昨日僕たちがお兄さんを助けに行ったビルの横。正確には橋下先生のマンションと繋がっているファッションビル。 そこに入っているクラブ にいるからと書かれていた。 「 これ?どういうことだ?」 頭が謎だらけの僕と王国。 でも行かないという選択はない。 僕らはまた昨晩通った同じ道を急いだ。 ビルを目の前にするとなぜか背中にゾクっと寒気が走る。回っていた警察車両の赤色灯と物々しい警官の姿。そしておびただしい野次馬の探るような目つきを思い出したからだった。 あんな悪意と失意の充満した場は初めてだったしあの時は無我夢中だったけど改めて平常に戻っているビル周辺の装いに変貌する街の顔を恐ろしくも思った。 王国の体温を感じたくて隣にいる肩ににコトリと頭を寄せると、同じ気持ちなのか王国も僕の頭をクシャッとかき回した。 「 大丈夫か?昨夜の事思い出して怖いんじゃない?」 覗き込むように僕の気持ちを聞いてくれる王国。 「 王国と一緒なら大丈夫 」 頷いた王国はサンドラさんに着いたとラインを送った。 「 沢木のビルって言ってたよね 」 と王国に聞くと、 「 ああ、覚えてた?看板から見ると大分店も名前が変わってる。クラブ ファイブってやばいクラブがあったのも名前変わってるな 」 その時ビルの奥まった方の入り口から女の人が出てきて僕らに声をかけた。 「 サンドラ様のお友達ですか?」 「 サンドラ、様? あ、はい。そうですが 」 「 よくいらっしゃいました。どうぞこちらへ 」 よく見ると女の人にしては背の高いスーツ姿。綺麗に漆黒のセミロングの髪の毛カールさせて、ダークブルーのスリーピースを身につけた超絶美形な人に連れられて僕らはエレベーターの箱に乗った。五人も乗れば満員のそれの中は甘いねっとりとした香りが充満していて思わず掌で鼻を押さえた僕。 「 この香り、イランイランはお嫌いですか? 」 と尋ねる女性に僕は思わず、 「 はい、苦手なんです 」 と答えていた。 「 まぁ、初心でらっしゃる 」 微笑むその女性の瞳の奥になぜか猛った雄を感じてしまい僕は王国の陰にそっと隠れた。

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