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第309話

お兄さんの秘密 64 (杏果 ) デ セールの余興の後、食後の余韻を楽しむ場で、 「 デザートワインは最後まで肉体を歓ばすの 」 サンドラさんがグラスをみんなに手渡す。 肉体を歓ばすの? そんな言葉と食事の始まりから終わりまで曖昧な境界線がとても心地よく心まで和やかに流れていく。 全裸の姿は光を従えて部屋に美しくシルエットを残す。 人って綺麗だ。 価値観の今までの自分から解放させる。 サンドラさんの言っていたのは、 このことかなって思った。 照さんたちが各々楽しかった、素晴らしいと感想を述べながら退室すると、サンドラさんが僕らに向き直る。 「 さぁ、なんなの?悩みは 」 王国は答えない。どうして?いかに自分の価値観だけで考えてるのがわかったから、僕もそう。 「 先日の渋谷の事件なら知ってる。 私ここにいたから 」 「 え? 」 「 あれさ、政権闘争だよね。 与党の大物の息子がやられた。 みんな私の世界ではそう思ってる 。 でもね、全部捨てるみたいよ、 何かのために。彼は 」 何かのために、それだけ聞けば充分なの? 王国が苦しそうに、 「 それでいいのかな……もっと違うもの掴んだって、いいのに……なんでうちの兄貴は 」 「 王国、バカね、全てを捨てるほどの愛、経験できることなんてなかなかないよ。それを掴める者は幸せよ。 先はわかんない、でもさ、ひと時でも信じられるものを掴んだ人は強いのよ 」 大きく息を吐く王国。 「 あいつが本当に全て、全て捨てるなんてわかんないじゃん 」 「 そうかもな、でもそんなの、本人同士しか分からない。だからこそあんたの知ってる人を信じてやるしかないだろ? お前に何ができる。 できるのはその大切な人が傷ついたときに責めるんじゃなくて寄り添う心だろ 」 サンドラさん、正にの言葉、王国の気持ちに響くと良いのだけど。 「 じゃあ、反対に……王国のお兄さんは全てを捨てられるの? 」 答えに詰まった王国にサンドラさんが畳み掛ける。 「 どうした? 被害者なの?その人は 誰にも強制されるのでもなく二人が離れたくないなら、それを信じてる二人をどう思うのか。 よーく考えなさいよ。マイノリティーなんていつもその誤った圧力との闘いなんだから 」 サンドラさんとの話をした夜の 何日後かの新聞にスクープが飛んだ。

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