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第318話
お兄さんの秘密 73(王国 )
病院を出ると杏果と流星はバイクだというので、ちょっと嫌だったけど駐車場で別れた。
今は兄貴の事で手一杯だった。
放心してしまった兄貴を連れて店に帰り着くと待っていたオフクロが兄貴を抱きしめた。
「 疲れたでしょ、ご飯食べて、お風呂はいって、もう寝なさい 」
子どもに言い聞かすようにそのまま自宅に連れて行く。兄貴も人形みたいにおとなしく従った。
オヤジと姉貴と三人になると、
「 杏果ちゃん、帰り寄ってくれたけど今日は帰りますって、なんかハンサムな男の子と帰ってったよ 」
ハンサムは一言余計だろう。
と思ったけど肝心の話しをしないとな。
「 相澤の事、ニュースでやってる?」
「 あぁ、最初ニュースになって、それから出なくなってる 」
「 これから7時のニュースだからどうかしら?」
姉貴が店のテレビをつけると、ちょうどニュースが始まったところだった。
静かな店にテレビのアナウンサーの声だけが聞こえてくる。
次か次かと待っていたのに、
「 え?ちょっと、お天気になっちゃった 」
「 やんなかったな……」
驚いた姉貴とオヤジの声。
綺麗にスルーされている?
急いでスマフォを見ると、やはり昼過ぎに流れた最初のニュースより後のことは流れていない。
やっぱり酷い状態なんだろうか、
嫌いな奴のはずなのに心配でドキンと心臓がなる。
「 病院で佐川さんに電話して聞いたんだ。刺されてのは喉のへんだって、重篤?全然よくないって事だろ 」
「 そうか、喉のあたりか 」
「 ここで考えたってしょうがないわよ、もう上がりましょ。王国もご飯食べて元気出して、兄貴の方をなんとかしないと 」
姉貴の言葉で俺たちも家に上がる。
「 明日は店頑張らないとダメだな 杏果ちゃんに慰めてもらおう」
とオヤジが呟くのが聞こえた。
もうさすがに俺もそれに噛み付く元気もないみたい。
オフクロに聞くと兄貴は風呂だけ入って部屋に入ったらしい。
「 食べないのよ、仕方ないかな 」
俺が寝る前に夜食を持って行くというと、
「 そうね、助かる。あの子黙っちゃったら真珠貝みたいだから 」
と少しホッとしたように微笑んだ。オフクロでも今回のことはきてるんだ。
明日が見えない……
明日はどんな一日が来るのか。
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