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第319話
お兄さんの秘密 74(王国 )
ベッドに入って気が立って眠れない身体を持て余していると、
杏果からラインが入る。
労いの言葉とみんなの身体の心配。
そして、最近杏果がハマってるネット小説。その主人公で人気者の遥ちゃん頑張れスタンプが届いた。
ちょっと元気回復。
でもこんな日は生身の杏果抱きしめて眠りたい。
夜遅くに兄貴の部屋をノックしたが返事がないので部屋の前に置いた夜食。
翌朝見たらオフクロが握ったおにぎりだけは食べたようで、それを知ったオフクロが似合わない泪を目に溜めてたのが俺にもきつかった。
団さんは一般外科病棟に移り、店の合間を縫ってうちの家族と杏果まで巻き込んで団さんの身の周りの世話に通ってる。
事件より3日目、
やっと相澤のニュースが流れてきた。
それは兄貴にとってとってもきつい残酷な事実だった。
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元衆議院議員 相澤京司さん。
今月◯◯日、自宅前の路上で自称 飲食店経営 大◯△二 (四三)容疑者に咽頭部付近を刺され重篤な状態が以前続いている。予断を許さないが路上で現行犯逮捕された男は完全に容疑を認めており……
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4日経った今も重篤な予断を許さない容態。この言葉がどんなに兄貴の気持ちを突き刺しているのだろう。
初めて搬送され入院している病院が公に明らかになった。
佐賀さんに聞いた通り、
国立の救命救急センター。
兄貴の耳にもしっかりと聞こえたはず。店が終わった後に流れたそのニュースはうちの店を沈ませるのに十分な内容だった。
会いにいきたいだろうな。
顔をしかめて俯く兄貴の横顔はこの何日かでやつれきっている。
それでもオヤジは兄貴を店に出すことを厭わなかった。
「 一人にしておいたらだめなんだ。
働いてるのがいいんだよ 」
兄貴が心配でバイトに来ても泣きそうな杏果。
オヤジも泣いちゃだめだぞ、と言いながら、杏果ちゃんなら仕方ないな、なんて、まるでオヤジの代わりに杏果に泣いてもらってるみたいだ。
そのニュースが流れた深夜、和也さんが暖簾を下ろした店の外で僕たちを待っていた。
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