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第326話

4 閑話 小次郎のアイドルは、ニャンニャン その4 「 えっと、ラーメン大盛り4つ? 多すぎます、よね 」 2人のお客にラーメン4つ おかしくない?そう思ったら思わず言葉が出てしまった。 「 杏果チャンいいのいいの、 そのお客さん、2つずつ食べるんだから 」 と厨房のお父さんから声が飛んできた。 え?エ?こんなに…… 声が出そうになってお盆で口元を隠すと、 「 か、かわいい…… 」 5番のお客さんがつぶやいた。 「 杏果チャン、初日から飛ばしすぎ! ダメだよ、そんな可愛い顔で話しかけちゃ、 お客さん興奮して食べれないから 」 緊張しすぎてカウンターのお客さんがお父さんのそのアドバイスに笑っているのも気がつかなかった。 「 どうぞ、ごゆっくりしてください」 と言いながら後ろを向くとまた、 「 か、かわいい…… 」 と5番のお客さんが言う。でも、これはわかった、背中のニャンコが可愛いんだよね。 カウンターのお客さんたちがまた噴き出した。 「 あっぶね 」 と言いながら台拭きでカウンターを拭いてる人もいる。 「 はい、これ、10番に 」 とお姉さんに言われて、 今度はお店の更に奥の10番テーブルに 麻婆豆腐定食と餃子定食と中華丼を運ぶ。それぞれに小ラーメンが付いてるボリュームのあるランチらしい。 これは3回行くようになるよね! そう思って1つずつのセットをお盆に載せていると、 注文いい?と後ろの2番から声がかかる。 本当に忙しい店なんだ。 運ぼうか注文かとモタモタしていると、横からおかっぱの女の人が 「 注文、わたしが聞くから、あんたは運んで! 」 あっ、この人知ってる。この間もいた人 「 はい 」 と言いながら、なんかすごく不思議な気分になった。 働くってこういうことなんだ。お客だった時と真反対になるんだなとしみじみ思いながら、 僕はとにかく言われた通りコマネズミのように動き回った。背中は猫だけどね。 「 少し楽になったから昼飯食べちゃいなよ、なにがいい? 」 と今までとは違う声がしたので厨房を見ると、さっきのお兄さんが帰ってきていた。 「 なにが?って 」 「うん、店のメニューなんでもいいのよ、杏果チャンはメニュー覚えた方が良いから 」 あ、そうなんだ。メニュー覚えるためか。

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