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第208話

閑話 小次郎のアイドルは、ニャンニャン その3 最初にお店に入った時もこのお姉さんは美人なんだけど愛想のない人だったよね。などど失礼なことを思っていると、 「それに着替えたら下に来てね。 今日は王国(おうこ)ほかの仕事に行ってるけど夕方には来るから。それまでは私になんでも聞いてね、それと金目のものや私物はお店に持って来てねここは鍵かけてないから 」 お姉さんは早口でそれだけ喋ると出て行った。 バイトの服に着替えると、なんだかやる気がムクムクと出てきた。社会に出るんだって自覚? よし!頑張る! 階段を降りると、ちょうど岡持ちを持った人が店から出てくるところだった。 「 あっと、ごめんな 」 すごい綺麗な人だ、この人も安藤くんに似てるなぁ、と思いながら不躾に顔を見上げていると、その綺麗な人は 「 あっ、そのユニ可愛いの、似合うな〜〜バイトの三枝君? 」 と声をかけられた。 「 はい!三枝杏果です 」 と応えると、 「 僕は王国の兄の洸紀(こうき)、出前行くからまたね 」 と言って、お店の横に止められていたカブにスラリと乗って岡持ちごと去っていった。 はあ、びっくりするほど綺麗な人だよね。あの人が安藤君のお兄さんなんだ! 気合いを入れ直し暖簾をくぐってお店に入ると、かなり満席に近くなっている。 「 あっ、こっち、これを5番に運んで 」 「 5番? 」 「 そう、これが席次表だから見てね 」 配膳用のカウンターの上に ラーメン丼が4つ湯気を立てて載っている。 これね、と指差すお姉さん。 「 おぅ、杏果チャンおはよう! 」 厨房の奥のお父さんが僕に挨拶しながら、 「 お尻に力入れて、下半身落として運べよ、大盛りだから重てえからな!」 言われるままコクコクと頷き、 僕のバイトの初仕事はラーメン4つを運ぶことから始まった。 お客の頭にラーメンぶっかけるな、という姉貴の言葉が頭をよぎったけど、お尻に力を入れ下半身を落として5番テーブルにぎこちなくも無事運び終える。 「 お、待たせていたましました 」 5番テーブルの2人のお客さんが僕をガン見する。 え?なんか間違った?

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